Voicyそなえるらじお #870 新潟地震から60年…コンビナート火災とメガソーラーの共通点
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月17日(月)、本日も備えて参りましょう!
新潟地震・60年目
本日のテーマは「新潟地震」のお話です。
昨日6月16日は、1964年に発生した「新潟地震」からちょうど60年目となる日でした。本日はこの新潟地震のお話です。
新潟地震
新潟地震は、1964年6月16日、お昼過ぎの13時1分に、新潟県北部にある「粟島(あわしま)」付近で発生しました。マグニチュード7.5、地震の深さは34キロ、最大震度5を観測した地震です。
マグニチュード7.5に対して最大震度5は小さく感じるかもしれませんが、1964年当時は地震計が少なく、震源から最も近い地震計まで距離が60キロほど離れていたことも要因です。現在と同じレベルで地震計が設置されていた場合は、震度6弱・6強なども観測されていたことが想定されます。
新潟地震では、強い揺れによる被害の他、火災、液状化、津波などの被害が生じてます。この影響で、地震による死者は26名、家屋の全壊が約2,000棟、半壊が6,600棟、津波などによる浸水被害が15,000棟発生しました。
新潟地震と火災
新潟地震による火災、地震直後に市街地で発生した住宅火災は数件程度でしたが、当時の昭和石油の製油所に設置されていた大型の石油タンクで大規模な火災が発生しました。この火災は、3万キロリットルの大型原油タンクの浮き屋根が、地震の揺れによって大きく動く、いわゆるスロッシング現象によりタンクの壁に衝突し、その衝撃で発生した火花により着火したと想定されています。
当初は製油所内の5基の原油タンクでの火災でしたが、消火活動の遅れから次々と延焼を起こし、大小合わせて70の石油タンクに延焼、製油所全体に火災が広がる最悪の状況となり、最終的は周辺の住宅数百棟を巻きこむ大規模な延焼火災に発展しました。文字通り、手のつけようのない大規模コンビナート火災となったのです。
悪いことに、地震発生当時、県内にはこのような化学火災に対応出来る消防隊や設備が存在せず、東京消防庁の化学消火隊が到着するまでの34時間にわたって、消火活動が一切行えない状況となりました。石油コンビナート火災としては、現在においても史上最悪の被害をもたらしたもので、新潟地震による象徴的な被害のひとつとして記録されています。
石油コンビナートには大量の可燃物があり、しかも通常の火災と異なり水をかけて消火することができません。このような危険物を抱える施設においては、徹底した防災訓練、近隣の消防と協力した消火訓練などを実施することが重要ですが、例えば昨今においては全国で無秩序に広がるメガソーラーにおける火災が、似た状況になりつつあります。
太陽光パネルは、夜間の火災であっても、燃える炎の光で電力を生み出してしまうため、消火活動が困難になるという問題があります。石油火災などと異なり、太陽光パネルの火災は水で消火できますが、感電リスクを避けるために距離を置いて活動をする必要があります。住宅の屋根に乗っているパネル程度であれば、そこまで大きな問題にはなりませんが、メガソーラーのように大量のパネルが密集している箇所の火災では、被害が拡大する恐れもあります。
施設を保有する際には、それが各種の自然現象に見舞われた場合の対応、火災等に対処する準備が不可欠、この教訓は現代においても改めて認識すべき事項と言えます。
新潟地震と液状化
新潟地震による被害、もうひとつの特徴が大規模な液状化現象です。新潟平野には、砂が堆積した地盤が広がり、地下水の水位も高いという特徴があるため、液状化を起こしやすい土地が多く存在します。新潟地震による揺れで、新潟市内でも地面から砂を含んだ水が一斉に噴き上がるなどの状況となり、大きな被害が発生しました。
場所によっては、土砂が噴き出した穴に人が転落して死亡したり、自動車などが地面に埋められたり、側方流動と呼ばれる現象で河川にかかる橋が破壊されたり、また新潟地震の被害写真として有名な、4階建ての鉄筋コンクリート作りのアパートが液状化で無傷のまま横倒しになる被害などが発生しています。
それまでの大地震では、あまり液状化による被害には注目されていませんでしたが、新潟地震による大きな液状化被害をきっかけに、大地震による液状化現象の研究などが進むことになりました。
新潟における液状化現象は、1964年の新潟地震以降も続いています。2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震、そして2024年の能登半島地震でも、液状化による建物やインフラ被害が生じています。
以前は、一度液状化現象が発生すると、地震の揺れにより地盤が固められるので、それ以降は液状化は生じないという説がありましたが、その後の研究により地震の揺れでは地盤が固められることはなく、一度液状化を起こした土地は、同じような地震が生じてれば何度でも緩くなるというのが、現在の考え方になっています。
また、過去の地震においても、地盤改良などの液状化対策を施している建物は被害がを免れたケースも多くあるため、住宅をはじめとする建物を建てる際には、地盤調査による液状化リスクを洗い出し、液状化が想定される土地の場合にはお金をかけて地盤改良などの対策を取らなければ、いつか建物が傾く被害が生じる可能性が高くなります。建物の耐震化だけでなく地盤改良にもぜひ注目してください。
本日も、ご安全に!
本日は「新潟地震」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!