Voicyそなえるらじお #873 明治東京地震から130年…地震を我が家の震災にするかは自分次第
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月20日(木)、本日も備えて参りましょう!
竪穴式住所なら大地震でも死なない
本日のテーマは「明治東京地震」のお話です。
本日6月20日は、いわゆる首都直下地震のひとつ、明治東京地震からちょうど130年目となる日です。本日はこの地震のお話。
明治東京地震
明治東京地震は、1894年(明治27年)6月20日、お昼過ぎの午後14時4分頃、東京湾北部を震源に発生しました。マグニチュードは6.8から7.0程度、深さは40キロから60キロ、最大震度は現在の震度階級で6弱相当の地震でした。
この地震では、東京の下町地域・横浜・川崎を中心に建物倒壊等の被害が生じ、全体で31名の死者が生じています。いま現在想定されている首都直下地震では、数千から1万を超える死者が想定されており、この数字と比較すると死者31名というのは奇妙に少なく感じます。
都心直下で発生した明治東京地震、被害が比較的小規模で済んだ理由のひとつは地震の規模と深さです。想定されているマグニチュードは6.8から7.0と、直近で想定されている首都直下地震のマグニチュード7.3と比較すると、エネルギーの大きさで5分の1程度と想定されます。
さらに震源の深さが地下40キロから60キロと、そこそこ深めの場所で発生したことも被害を小さくした原因と考えられます。直近で生じている大震災の多くは、地下10キロから20キロ程度の場所で発生しており、深い場所で発生する地震は広い範囲に揺れをもたらしますが、直上の揺れの大きさは小さくなります。
そのため、東京湾北部という、最悪の発生場所であったにも関わらず、木造住宅などの被害が比較的軽微で済んだため、被害の規模という言い方では小さかったのが、明治東京地震の特徴です。
なお、この明治東京地震の約40年前、1855年に発生した安政江戸地震では、1万人を超える死者が生じたと想定される大震災でした。ひとくちに首都直下地震といっても、その有り様は地震により大きく変わり、しかも生きている間に複数回の大地震に見舞われる可能性があるのだ、とうことは知っておいてください。
揺れの被害は人災
大地震は予知のできない災害であるため、事前対策の有無がそのまま生死に直結します。地震の揺れを体験する施設や、起震車などで震度6強・震度7の揺れを体験すると、意外と耐えられると思われるかも知れませんが、地震体験は
- 揺れることが分かっており、しかもカウントダウン付で
- 揺れている時間も実際の揺れよりは短く
- 多くの場合縦揺れはなく横揺れのみで
- 揺れる場所には頑丈な手すりがあり
- 転倒・落下・衝突してくる家具や家電はなく
- もちろん電気は付いている
という、至れり尽くせりの環境が整えられているのが、地震の揺れ体験です。
実際の大地震が発生した場合は、事前の予告はなく、揺れは長く、激しく、手すりなどは存在せず、なんなら潜り込んだテーブルそのものが部屋中を動き回り、建物倒壊、家具転倒、家電落下、などで室内がメチャクチャになり、場合によっては夜間に停電して身動きが取れなくなります。このような状況が生じるから、大地震では大きな被害が生じるのです。
ところで、1894年(明治27年)の明治東京地震の時代、都心部にまだ高層建築物は数えるほどしか存在せず、四輪の自動車はまだ国内になく、鉄道の敷設がようやく始まったところで、電気・ガス・水道などのインフラは未整備で、要するに大地震に見舞われても、大規模な火災等に発展しなければ、壊滅的な被害…というものは生じない時代でした。建物が倒壊したら直せばよい、ただし火災だけはとにかく防ぐ、その様な状況が長らく続いていたのです。
ある意味で、地震の揺れによる被害は人災と言えます。足下が揺れるだけで、そうそう人は命を落とすことはありません。とはいえ、いまさら竪穴式住居で暮らし、石を割って土器を作り、どんぐりを拾いながら自給自足で生きていくことはできません。
現代において大地震が最悪の災害となっているのは、建物が重くなり、家財が増加したことで、建物倒壊や家具の転倒で致命的な被害を受けるようになったこと。液体爆弾ガソリンを積んだ自動車が時速100キロで何百万台も走り回っていること。生活物資の全てを遠くから運び、電気・ガス・水道が完全な状態でなければ生きて行けない人口密度の都市を作り上げてしまったこと。一度の大震災で、致命的な被害をうける暮らしにしてしまったことが問題となっています。
時代によって、都市の作りによって、また我が家の対策によって、大地震による影響は大きく変わります。準備がなければ大震災、準備が万全ならばアラアラ大変、事前準備の有無とレベルで、我が家にとっての災害になるかどうかを自分で決められるのが大地震への備えと言えます。防災は平時の今が本番、ぜひ出来る対策を行ってください。
本日も、ご安全に!
本日は「明治東京地震」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!