備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

Voicyそなえるらじお #886 夏…家庭のエアコン全て止めれば暑さは和らぐ?温暖化は止まる?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #886 夏…家庭のエアコン全て止めれば暑さは和らぐ?温暖化は止まる?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月10日(水)、本日も備えて参りましょう!

クーラーは文明

本日のテーマは「クーラーと二酸化炭素」のお話です。

今回はコメント欄に投稿いただいたご質問への回答、質問をくださいましたのは、ぽぽんたさんです。

『人間による温暖化が原因の暑さならば、みんながエアコンを使わなければ、車を使わなければ、世の中こんなに暑くならないのではないですか。エアコンを使えば使うほど、外気温は高くなる負のループに思えます、外の動物植物たちもかわいそう。みんなが一斉にエアコンを止めれば、外気は低くなりますか?

昔と比べて人間が軟弱になっているのでは?とも思いますが違うのですね…そう思って冷房を使わないでいると命に関わるのですね…嫌な話です。皆さま、今日もご安全にお過ごしください。』

家庭における二酸化炭素排出源

夏に全力で稼働しているエアコンの室外機の近くにいくと、ムンムンと熱風が吹き出していますので、これを全て止めればずいぶん涼しくなるのではないか…、確かにそのように感じますね。実際のところはどうなのか、調べてみました。

環境省が所管する組織、国立環境研究所が2022年に公表しているデータに、家庭からの二酸化炭素排出量の、用途別内訳という資料がありますので、この資料から内訳を見てみたいと思います。

まず結論から行きますと、家庭からの二酸化炭素排出量のうち、冷房が占める割合は全国・全世帯平均で約2.2%です。思ったよりもかなり少ない値だと思いませんか。日本中の家庭で冷房器具の動作を永遠に全て止めても、家庭から排出される二酸化炭素の削減量は2.2%にしかならないのです。

一方、冬場の暖房から排出される二酸化炭素の量は、全体の約17%を占めています。エアコンの設定温度を1度上げるよりも、暖房の設定温度を1度下げる方が、8倍も省エネ効果があると言うことになります。もちろんこれは全国平均ですから、地域差があります。ただ年間平均で言うと、暖房の方が冷房よりも8倍もエネルギーを消費しているのです。では、残りの8割のエネルギーは何が消費しているのでしょうか。

家庭からの二酸化炭素排出量で最も多いのは、照明や各種家電などで、これが全体の30%をしめています。さらに給湯関連で13%、コンロなどの台所周りで5%、ゴミの処理で4%、水道の供給にかかるエネルギーで2%と、冷暖房を除く生活周り全般でおおむね50%のエネルギー消費となります。

そして、残りの25%が自動車からの二酸化炭素排出です。もちろん自動車を保有していない家庭もあれば、1人1台で複数の自動車を保有する家庭もありますので、これは全国平均という値になります。

ということで、家庭からの二酸化炭素排出量内訳、冷暖房が20%、自動車関連で25%、残りの55%が生活全般となります。夏場のエアコンを全て停止しても制限できる二酸化炭素量は2%ということで、結局現代社会は膨大なエネルギー消費によって成り立っているため、冷房だけを止めても温暖化を止めることはできず、生活そのものを電気が生まれる江戸時代以前にもどさなければダメということになるのです。

家庭以外の二酸化炭素排出

では、地球温暖化を止めるために、家庭から電気や自動車を無くすことは有効なのでしょうか。残念なことにそれだけでは効果が薄いのです。

環境省が2021年に公開している資料によると、日本の場合家庭からの二酸化炭素排出量は全体の14.7%と、実は割合としてはかなり少なめです。ではどこから二酸化炭素が排出されているのかと言えば、まず最も多いのは工場を始めとする産業部門で、ここから35%の二酸化炭素が排出されています。

続いて商業・オフィス・サービスなどの部門が17.9%、物流に関する部門からが17.4%、発電などに関連する部門が7.9%となっています。本格的に二酸化炭素の排出を減らす場合は、家庭の節約だけでは効果が薄く、全ての工場を止め、全てのお店や会社を休業させ、トラックも鉄道も停止させ、発電所も止める、ここまでしなければダメなのです。

ということで、数字だけを見れば、エアコンの温度設定を1度下げることで節約できるエネルギーは0.01%以下と、意味があるような、無いような状況となります。ただ、だからといって部屋を極寒に冷やして、コタツをつけてアイスを食べ、ペットにアザラシとペンギンを飼育するようなことをしてはいけません。ただ、省エネを頑張りすぎてエアコンの温度を28度にキープするのは熱中症を招く恐れがありますので、28度設定にこだわらず、暑いと感じたら部屋を冷やすようにしてください。

近年の気温上昇の原因は温暖化であり、温暖化の原因は私達の社会がエネルギー消費により豊かになったことになります。意識として省エネを心がけることは重要ですし、また突然の停電に見舞われても死なないような防災をすることも大切です。

本日も、ご安全に!

本日は「クーラーと二酸化炭素」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

備える.jp 新着記事