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Voicyそなえるらじお #887 「自助」で即死を避け「共助」で生活を維持する…具体的には?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #887 「自助」で即死を避け「共助」で生活を維持する…具体的には?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月11日(木)、本日も備えて参りましょう!

自助・共助・公助

本日のテーマは「自助と共助」のお話です。

防災のあり方としてよく言われる、自助・共助・公助ですが、自分の命を自分で守る自助、公的な機関の力を借りる公助と比べて、その間に挟まれている共助というものは、時にフワッとした存在になりがちです。共助では具体的にどのようなことを考えるべきなのか、自助と共助をどう使い分け、地域でどのような準備が必要なのか、考えてみたいと思います。

命を守る防災は自助が9割

自助・共助・公助、家庭の防災で最も優先すべき項目はどれでしょうか、それは自助です。特に、自分と家族の命を守る防災は自助が9割となります。例えば大地震による建物倒壊や家具転倒で即死してしまった人は、揺れの直後に共助による救助活動が始まったり、大地震発生3分後に自衛隊が出動しても、死者をよみがえらせることはできません。

あるいは水害による避難は、レスキューや自衛隊による救助活動の様子が、ニュースなどでよく報じられます。しかしそもそも、沈んだり崩れたりする場所に住まなければ、救助を受ける必要すらなくなります。災害直後に自分と家族の命を守るための準備は、そのほとんどが自助によるものなのです。

自助の次に登場するのが共助です。ご近所同士で、あるいはマンションの住民同士で、またはもう少し広げて地域内での助けあいが共助になります。自助は自分自身や家族のことですので、行うべきことを決めるのも、準備を実行するのも、比較的容易です。お金と時間を捻出できれば、あとは自分のやる気次第で自助による防災を進められます。

一方、公的機関による公助は、基本的に税金を使って行われる防災が対象となります。そのため、基本的には公助は業務の一環として行われますので、やるべきことが定まれば実行そのものはスムーズです。しかし公助は対象範囲が全国民であるため、支援のスピードや量については不十分になる恐れもあり、基本的には生き残った後に必要なものの提供が主目的になります。

難しいのが共助です。自助は100%自分毎ですし、公助は仕事として提供される活動ですので、事前準備も発災時の行動も誰がなにをするのかが明確です。しかし共助は、共助をする側・受ける側が状況ごとに変わり、また共助の対象範囲もひとつとは限らず複数存在することがあるため、事前準備も発災時の行動も、なかなか進まないことがよくあります。

そもそも、共助で対応すべき内容は何で、それを誰が事前準備し、実際に災害が発生した際にはどうやってそれを実施するのか。こうした共助の項目がかなりフワッとしているため、誰かがやってくれるだろうという考え方では、恐らく誰も共助を進めてくれないというのも問題になります。共助は、誰が何をすべきなのでしょうか。

共助ですべきこと…戸建て・立退き避難編

共助ですべきことは、みんなで助け合わないと死ぬ状況において、命を守るための準備。そして1人で行うよりもみんなで行った方が、事前の準備も発災時の対応もスムーズにできること全般です。これは地域の特徴により内容が大きく変わります。

例えば津波・洪水・火災などの影響で、甚大な被害を受けそうな地域の場合は、住民の多くが家や生活基盤そのものを失う可能性があります。このような地域では道路の破壊や地域の孤立により、公助による支援もすぐには始まらないことが多いため、自助で即死を免れたあと、共助で生き延びる準備をすることが不可欠となります。

若くて健康な方も、身体の不自由な高齢者も、災害で家やインフラを失ってしまえば、等しく弱者となります。こうした状況においては、避難所での共同生活や、炊き出し、生活全般のサポートなどを、みんなで行うことが合理的です。

平時に、自分一人で生活が成立するのは、快適な家があり、電気や水道が完備し、お店に行けば何でも買えるからです。こうしたインフラが破壊された状況においては、自給自足の社会が成立していない分、むしろ江戸時代以前よりも厳しい状況になります。この状態で生き延びるためには共助による共同生活が有効です。

共助ですべきこと…マンション編・在宅避難編

一方、新しいマンションなどに住んでいる場合や、戸建ての場合も沈んだり崩れたりしない地域の場合は、大地震で建物が倒壊したり、水害で建物が完全に水没する可能性は低く、基本的には災害後も各世帯が、電気・水道・お買い物などが復旧するまで、自助で在宅避難を行い、生活を継続することになります。

自宅を失う可能性が低い場合、共助の役割はやや低くなります。生き延びるためにみんなで協力し合うという理由がなくなるためです。そのため、共助による生活の支援よりは、複数人で行った方が効率がよくなることを準備することが主目的になります。

例えばマンション等の場合、飲料水・食料品・日用品・非常用トイレなどは共助ではなく、自助で準備すべきです。マンション側としても、「各家庭で使用する消耗品はマンションとして準備しないため、各家庭で準備してください」と、きちんと伝えておくことが重要になります。

一方、例えば火災の初期消火訓練や、給水車からタンクなどへの給水訓練、共同で運用する発電機などの動作確認、スターリンク衛星によるWi-Fi通信の確保、また大地震後のマンション建物の排水管チェックなど、地域や建物全体に関連する項目や、1人で行うよりもみんなで行った方が全員にとって合理的な項目などは、共助で実施できるよう、普段から行うべきことを定めて、訓練などで手順を確認することが重要になります。

玄関より内側の準備は自助で、玄関の外側の準備は項目によって共助で、それぞれ行える様にするとわかりやすいかと思います。

共助ですべきこと…一方通行にしない

さらに、共助で重要なことは一方通行にしないことです。普段から社会サービスや公的な支援が欠かせない方々は、災害においてさらに多くの支援を必要とします。例えばマンションの10階に90歳の高齢者が住んでいる場合、災害でエレベーターが停止すると自力で地上へ降りることは困難になります。

こうした状況を前提に、マンションの共助で、生活が大変になる方をサポートすると決めるのは有効でしょうか。平時からも明確に支援を受ける側の人にとっては、ありがたい話だと思われると思いますが、おそらく支援をする側になる、例えば若い世代の方などにとっては、気持ちよく受け入れられるかはわかりません。

平時であれば、こうした支援を必要とする人に対するサービスは、個人のお金や公的な社会サービスとして提供されていますが、非常時にはそうしたサービスが使えなくなるため、何かしらの代替準備が必要です。しかしそれを、共助に頼る形で計画してしまうと、どうしてもそれは「共助」ではなく「一方通行の助け」になってしまいがちです。

しかし同時に、災害には誰もが要支援者になる恐れがあります。若い方も、事前の防災対策が万全な方も、想定外の災害で負傷したり、準備していたものが使えなくなる可能性があり、その場合は共助をする側から、共助を受ける側になります。さらに、災害が来るのは今日なのか、30年後なのかもわかりません。今は若く、共助を提供する側の人も、30年後には逆になる可能性が高いのです。

そのため、共助を計画する際には、最初から一方通行の計画をするのではなく、誰もが共助を提供する側にも、共助を受ける側にもなる、ということを前面に出すとスムーズになります。

これは、備蓄品の準備でも同じ考え方が重要です。共助の考え方を悪用し、自分は非常時の準備をせず、誰かの準備にただ乗りすれば良い、と考える人が必ず存在します。そのため、マンションや自治体において、備蓄品はそれぞれの責任で行い、共助はその外側の対応をする、ということを明確に周知しておくことも重要かと思います。

自助で即死を避け、共助で生活を維持する。共助で維持すべき生活のレベルは、地域のリスク度合いにより変わります。死なないためのギリギリの生活を共助で維持するのか、快適さを高めるために共助で助け合うのか、地域の状況に合わせて事前の計画をお考えください。

本日も、ご安全に!

本日は「自助と共助」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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