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Voicyそなえるらじお #888 松山市で発生した「想定外」に近い土砂災害に関する状況と問題

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #888 松山市で発生した「想定外」に近い土砂災害に関する状況と問題

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月12日(金)、本日も備えて参りましょう!

大変に難しい災害

本日のテーマは「松山市の土砂災害」のお話です。

本日早朝、愛媛県松山市で大規模な土砂崩れが発生し、複数の住宅やマンションが巻きこまれる災害に発展しました。行方不明者も生じており、現在進行系で救助や捜索活動が行われておりますが、本日はこのお話。

松山の土砂崩れ…ハザードマップの状況は

2024年7月12日、早朝4時前、愛媛県松山市で土砂崩れが発生しました。場所は頂上に松山城がある山の斜面で、幅50メートル・高さ100メートルにわたり崩れ落ち、斜面のふもとにある複数の住宅やマンションに土砂が流れ込み、大きな被害となっています。

NHKなどによるニュース映像を見ますと、松山城がある山の頂上近くから、大量の土砂や倒れた樹木が流れ落ちている様子が確認できます。ニュースでは土砂崩れと報じられていますが、いやゆるがけ崩れというよりは、大量の雨水・土砂・樹木が流れ落ちる土石流に近い現象が生じたように見えます。

この土砂の直撃を受けたふもとの民家が全壊、となりに立っていたマンションの部屋にも土砂などが流れ込んでいるようです。NHKニュースによれば、マンションの4階くらいまで土砂の後があり、ベランダの柵が破損して状態で、またマンションの6階ほどに流されてきたと思われる樹木が引っかかっているということです。

まず気になるのは、今回の土砂災害はハザードマップで想定されていたのかという点です。重ねるハザードマップを見ますと、松山城のある山は周辺を市街地に囲まれていますが、山の周囲はぐるりと土砂災害警戒区域、および土砂災害特別警戒区域に囲まれています。地すべりや土石流に関する色は付いておらず、想定される現象としては急傾斜地の崩壊…いわゆるがけ崩れが指定されていました。

今回は山の高い場所から土砂が崩れ落ちていますが、崩壊が始まった場所には土砂災害警戒区域などの色はなく、さらに押しつぶされた民家の場所は、ちょうど色がない場所になっていました。隣の家は土砂災害特別警戒区域・レッドゾーンなのに、我が家だけまるで聖域のように色が付いていない、そんな場所を土砂が直撃した形となります。

ハザードマップだけを見れば、安全な場所のように思えますが、周囲の地形を見てみますと、市街地ギリギリまで高い山の斜面が迫っており、たしかに色は付いていない、しかしそれをもって、ここが安全な、土砂災害のない場所であると言い切るのは難しそうな、そんな場所が今回の現場となっています。

あらためて、ハザードマップとは危険な場所を示す地図であり、安全だということを示すものではない。自分自身の目で周囲の地形を確認し、危険がありそうならばハザードマップで色がなくとも、同じように警戒をすることが重要だ、ということを再認識するような災害になったということが言えます。

避難に関する状況について

松山市では、2日前の7月10日から大雨が降っていましたが、記録的な豪雨というところまではいかず、松山市からも「警戒レベル3:高齢者等避難」や「警戒レベル4:避難指示」などは発令されていなかったということです。

また気象庁からの防災気象情報についても、土砂崩れが発生したタイミングでは、松山市内に大雨注意報が発表されていただけで、こうした状況から事前に避難や警戒を行っていた住民はいなかったと想定されます。

これもまた難しいところで、ハザードマップで色が付いている場所に住んでおり、そこが床上浸水や、土砂災害の直撃を受ける恐れがある場合は、避難が必要になります。大地震が発生した後は津波や土砂災害を警戒しての避難が必要ですし、台風や大雨の場合は、基本的に自治体から避難情報が発表されたら行動を始めます。

しかし今回の場合、自治体からの避難情報も、気象庁からの防災気象情報も、避難を開始するようなレベルでは発表されていなかったため、日頃からハザードマップを確認し、周囲の地形もチェックし、避難指示などが発令される状況だったらためらわずに逃げよう、そう考えていたとしても、この突発的な土砂災害は避けられなかった恐れがあります。

ということでまとめですが、今回の土砂災害は、ハザードマップ上で危険が示されていない場所にも大きな被害が出た、さらに事前に避難を促す情報はなかった、大雨も降っていたがそこまですさまじいものではなかった。

さらに、土砂災害の心配がある場所では、木造住宅では鉄筋コンクリートなどの建物に住む。できればマンションの1階や2階は避け、高い階がよいとも言われますが、今回はマンションの4階にまで土砂が到達しているということで、不意打ちを避けるための対応にも限界があったことがわかります。

ということで、あまり使いたくない表現ですが、想定外の被害になっているという状況です。詳しい災害発生の原因や、被害の状況については、今後の専門家コメントや、ニュース報道の続報を待ちたいと思います。

本日も、ご安全に!

本日は「松山市の土砂災害」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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