備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

Voicyそなえるらじお #882 熱海土石流災害から3年…人災も天災も「避ける・逃げる」が重要

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #882 熱海土石流災害から3年…人災も天災も「避ける・逃げる」が重要

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月3日(水)、本日も備えて参りましょう!

3年目

本日のテーマは「熱海土石流災害」のお話です。

本日7月3日は、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生してからちょうど3年目を迎える日です。死者28名、98棟の住宅被害が発生した大規模な土石流、発生原因に人災の要素を含むことが、その後のやり取りを複雑にしています。今回はこの熱海土石流災害のお話です。

熱海土石流災害

2021年(令和3年)7月3日の午前10時半頃、静岡県熱海市を流れる小規模な河川、逢初川(あいぞめがわ)で突発的な土石流が発生しました。山間部で発生した土石流は市街地に流れこみ、多くの住宅を巻きこみながら下っていき、JR東海道本線やJR東海道新幹線を超えて太平洋まで流れ込みました。

この土石流災害で、災害関連死1名を含む28名の方が命を落とされ、住宅の全壊53棟、半壊と一部損壊45棟の被害が発生しました。犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。

被害の特徴

この土石流災害の特徴は、発生原因に人災の要素を含むことです。

土石流は逢初川(あいぞめがわ)の上流部を起点に発生していますが、この起点となる山の谷間には、建設残土による盛り土が大量になされていました。土石流後の調査では、発生した土石流の土砂の大半が、この盛り土に由来するものであることがわかりました。

この盛り土は、建設残土の処分を目的に行われていたもので、違法盛り土ではなく存在そのものは条例に基づいて作られていた物でした。しかし、盛り土を行って行く段階で、排水設備や土砂の流出対策に不備があったり、盛り土の規模が計画よりも大きくなっていたりと、存在は合法だが、運用は最善とは言えない、という状況で作られていた存在でした。

では、盛り土が崩壊することは想定外だったのでしょうか。土石流が発生した地域は、災害発生前から「土砂災害警戒区域」に指定されていました。そのため、大雨や大地震が発生した際には、盛り土の有無に関係なく土石流に襲われる可能性があることは、わかっていたのです。

結果としては盛り土が崩壊したことで大きな被害が生じた、しかし盛り土が無かったとしても、土石流が発生する可能性は存在した、これもまた状況を複雑にする要因になっています。なお、盛り土の近くにメガソーラー施設が存在していましたが、この土石流に関して言えばメガソーラーの存在は発生に関係していないということがわかっています。

この盛り土が存在する、熱海市の伊豆山地区に、土石流発生の3日前から大雨が降っていました。1時間あたりの雨量は10ミリから20ミリと、それなりに激しい雨だが、恐怖を覚えるような超大雨とは言えない、という雨量でしたが、これが2日半にわたって断続的に降り続けたことで、累積雨量は過去最高となっていました。

このような大雨の影響を受け、盛り土が崩壊し、大規模な土石流が発生したと言うことになります。盛り土が存在しなければこの土石流は発生していなかった可能性が高く、その意味では人災と言えます。

ただ、国内多くで生じている土砂災害の多くは、都市開発の一環で山やガケを削った場所で生じていますので、そういう意味では土砂災害の多くは人災です。ただ、今回は崩れた土砂のほとんどが盛り土だったということで、人災の要素がより強調されているということになります。

避難について

土砂災害そのものを防ぐことは、なかなか困難ですが、事前に避難をすることで人的な被害は無くすことができます。熱海土石流災害における、避難の状況はどうだったのでしょうか。

まず、熱海土石流災害が発生した2021年7月というのは、2021年5月に避難情報が大きく改訂された直後の時期に当たります。従来の避難勧告などが廃止され、警戒レベルと合わせる形に避難情報が整理されました。

ハザードマップなどで、沈んだり崩れたりする恐れがある場所に住んでいる人は、市町村から発表される避難の情報を活用して判断を行います。避難に時間がかかる人は警戒レベル3:高齢者等避難、が発令されたら逃げる。その他の人は警戒レベル4:避難指示が発令された逃げる。この運用が始まった直後の大雨がこの2021年7月でした。

大雨が降り始めたのは7月1日の深夜0時頃、そこそこ強い雨が1日以上降り続け、よく7月2日の朝には気象庁から大雨警報が発表され、その後熱海市から「警戒レベル3:高齢者等避難」が発令されました。その後もそこそこ強い雨が降り続け、お昼過ぎには気象庁から「土砂災害警戒情報」が発表されます。

このタイミングにおいて、個人が得られる情報としては、市からは警戒レベル3:高齢者等避難が発令、キキクルなどを見ると警戒レベル4相当の情報が出ており、屋外にはそこそこ強い雨が降り続けている、という状況です。この状態で自主的に避難を開始するかどうかは難しい所です。

この土石流被害を受けた地域は、全域が土砂災害警戒区域にありましたので、命に危険を感じる状況では逃げることが優先されます。しかし警戒レベル3:高齢者等避難の段階では、まだ様子見をする方も多いのでは無いかと思われます。

さて、熱海市はこの段階で、警戒レベル4:避難指示を出すかどうかの判断に迫られました。2ヵ月前の法律改正前であれば、まずは避難勧告を発令し、その後様子を見て避難指示に格上げという運用が行われていたと言うことですが、その避難勧告は廃止されていました。

また、天気の見通しとしては、これから先雨は弱まるという発表もあったため、熱海市は避難指示の発令を見送るという判断をしたのです。しかしその後も雨は断続的に降り続け、日が変わって7月3日、午前10時半頃、避難指示が出されていない状況において、土石流が発生することになりました。

結果論的には、熱海市は避難指示を出すべきだったと言えます。しかし、避難指示が出ていたとして、はたして被害が発生した地域において、どれだけの方が避難行動をとったかはわかりません。昨今生じる、多くの浸水害や土砂災害は逃げ遅れが原因になっています。行政側はためらわずに避難指示を出す、住民側はこれに従う、毎回避難するのが面倒であれば、沈んだり崩れたりしないところへ引越をするしかない、これしか言えることはないのです。

2026年からは、気象庁から発表される防災気象情報が整理されてわかりやすくなります。市町村からの避難指示などが出なくても、自分でテレビやスマホを使えば現在の危険度を把握するコトがより容易になります。しかしその情報を活用しなければ、行動しなければ、意味がありません。

水害被害は家選びで半分決まる、ぜひ安全な場所に住んでください。自分がもう無理でだという場合は、三世代をかけて移住をお考えください。その積み重ねでしか、抜本的に水害を回避することはできません。

本日も、ご安全に!

本日は「熱海土石流災害」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

備える.jp 新着記事