Voicyそなえるらじお #912 台風時は会社を休業に…ができない企業の防災とBCPのお話
最終更新日:
執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、8月16日(金)、本日も備えて参りましょう!
備え・防災は日本のライフスタイル
本日のテーマは「災害と企業の防災・BCP」のお話です。
現在接近中の台風7号、首都圏への上陸はギリギリ避けられそうな状況ですが、逆に上陸しないことで海からの水蒸気補給を潤沢に受けられるため、関東に接近する台風としては歴代最強クラス、中心気圧940hPa・強さは「非常に強い」台風として接近してきています。
本日8月16日(金)は関東から東北の太平洋側に大きな影響が生じる恐れがあります。鉄道なども計画運休・突発的な運休が生じる可能性があり、また暴風による被害や停電の発生も想定されます。外出を避ける、会社もできるだけリモート対応などを行う、といった対策が必要です。
ということで本日は企業の防災についてのお話
止められない仕事
前回の放送では、台風・大雨・大雪など、来ることが分かっている自然現象による被害が見込まれる際、交通機関が止まったり、店舗が休業したりすることを社会全体で受け入れなければならない、というお話をしました。
その一方、災害が見込まれる場合でも止めることができない仕事も存在します。代表的なものは人の命を直接預かっている業種、病院、高齢者施設、介護施設、福祉施設などは、雨が降ろうが槍が降ろうが完全に休業することは出来ません。
さらに、インフラを維持する業種、電気・ガス・水道・通信、データセンターといった、災害時に多くの方が自宅に閉じこもる場合にこそ、なくなると困るライフラインについても止めることはできませんし、被害が生じた場合には素早い復旧が必要となるため、待機が必要となります。
また、社会を維持するために必要な業種、警察・消防・市役所・自衛隊なども、むしろ災害が見込まれる状況に仕事が増えます。こうした業種についても全ての業務を止めることはできません。
こうした、人の命に直接関わる仕事、ライフラインを維持する仕事、社会を維持する仕事などは、災害時に休業してしまうことができませんので、相応の準備が必要となります。それを企業では「BCP・事業継続計画」と呼び、多くの会社が非常時に事業を継続するための備えを作成しています。
BCPが必要です
ところで、災害時にも止められない業種においても、常に普段通りの仕事を継続する計画を立てるわけではありません。優先順位を立てた上で、止められる仕事は止め、できるだけ災害時に継続する仕事は少なくすることが重要です。
例えば病院の場合、災害が見込まれる場合は入院患者への対応や緊急の外来以外は止めるという対応ができます。定期検診や健康診断は平時であれば重要なサービスですが、台風が来ている状況では止めることができる仕事と言えます。
高齢者施設、福祉施設、介護施設などにおいても、入居者の生活支援は災害時にも必要ですが、普段と同じようなフルサポートを維持するのではなく、最低限必要なサービスはどれで、それを行うためにどのくらいの人員が必要なのか、をあらかじめ検討し、その人数は台風前日に施設泊まり込みで出勤してもらう、といった対応がBCPにおいて必要となります。
電気・ガス・水道を始めとするライフラインについても、災害時の保守や復旧に関わる方々は泊まり込み対応が必要になる場合もありますが、例えば平時には重要な施設の定期検査、検診・集金業務、営業やイベントなどは、台風の前日には止めるという対応ができます。これで出勤すべき人数を絞ったり、他の部門から応援を確保する計画を立てることがBCPの内容となります。
また金融業なども店舗営業はともかく全てのサービスを止めることはできませんし、保険会社なども災害中のコールセンターなどは維持する必要があります。このような業界においては、拠点を国内外の複数に確保し、いずれかの拠点がダウンしても他の拠点でそのまま業務を続けられるような、ホットスタンバイという仕組みで仕事を止めない準備をおこなったりします。
これら、災害対応にはコストが必要ですので、本来は非常時対応にかかる費用もサービスの価格として盛り込んでおかなければなりません。これは現場と言うより経営側の仕事で、災害時を見込んだサービス設計が行えない会社は、非常時に業務が止まり最悪の場合は倒産することになります。そして私達利用者側も、災害時対応に必要なコストが価格に反映されることを許容しなければならないというのが、本来の姿と言えます。
その他事例は無数にありますが、非常時にも止められない仕事については、その仕事の水準をどこまで落とせるかを検討し、その水準の仕事を行うために必要な人・モノを洗い出し、それを確保する為の具体的な方法を考えて計画する。これがBCPの具体的な内容となります。
もちろんBCPは災害時に止められない業種以外にも重要で、オフィスは閉鎖するがリモートワークで仕事を行える様にするとか、店舗は休業にするがオンラインでお客様対応が行える様にするとか、安全に仕事を継続する方法があるならば、そのための準備を整えることも重要です。
台風や大雨が見込まれる際に、会社をお休みに、従業員を守る判断を、といった呼びかけが多くなされますが、一方でそういう状況でも出勤してくださる方々のおかけで、自宅に閉じこもってニュースを見ることができる、災害後もすぐに復旧してもらえる、そうした見えない努力にはぜひ思いを馳せていただきたいです、それにかかる費用はサービスの原価に盛り込まれなければならない、ということも知っていただきたいと思います。
本日も、ご安全に!
本日は「災害と企業の防災・BCP」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!