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Voicyそなえるらじお #1194 日本の防災は海外と比べて進んでいるのか、遅れているのか?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #1194 日本の防災は海外と比べて進んでいるのか、遅れているのか?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、10月24日(金)、本日も備えて参りましょう!

日本と海外の防災の違い

本日のテーマは「日本と海外の防災の違い」についてです。

日本の防災は遅れているのか?イタリアでは災害直後にベッドと温かい食事が出てくる、日本は体育館で雑魚寝、ひどすぎる。この評価は適切なのでしょうか。日本の防災は世界的にも進んでいると思います。大震災などの被害の違いがそれを証明しています。

直近の大地震の被害の違い

①東日本大震災とスマトラ島地震の違い(AIまとめ)

2004年のスマトラ島沖地震と2011年の東日本大震災は、ともにマグニチュード9クラスの巨大地震と津波による大災害でしたが、被害の規模、地理的範囲、社会的影響に大きな違いがありました。

項目
スマトラ島沖地震東日本大震災
発生日 2004年12月26日 2011年3月11日
地震規模 マグニチュード9.1〜9.3と推定。観測史上3番目の規模 マグニチュード9.0。日本観測史上最大規模
津波の到達範囲 インド洋の広範囲(10カ国以上)に影響。遠く離れたアフリカ沿岸にまで津波が到達。 主に日本の東北地方沿岸で被害が発生。
死者・行方不明者数 約22万〜23万人 約2万人
経済的被害 約63億米ドル。 約2350億米ドル。
人的被害の背景 地震・津波の防災意識や警報システムが不十分であったこと。発生当時はインド洋に津波警報システムがなかった 津波警報システムは機能したが、想定をはるかに超える津波の高さと広範囲にわたる浸水が被害を拡大させた。
社会的影響 **多くの開発途上国を襲い、甚大な人的被害と地域社会の崩壊をもたらした。**その後の復興は国際的な支援に大きく依存した。 原子力発電所事故(福島第一原発事故)という、特有の複合災害が発生。インフラやサプライチェーンに広範な影響をもたらした。
教訓と対策 インド洋における津波早期警戒システムの構築につながった。 津波ハザード評価の見直し防災意識の再構築原子力防災の課題を浮き彫りにした。

主な相違点

  • 人的被害の規模: スマトラ島沖地震では、防災体制が不十分だったこともあり、人的被害が東日本大震災の10倍近くに達した。
  • 複合災害: 東日本大震災では、地震と津波に加えて原発事故が発生し、避難区域の長期化や放射能汚染という特有の被害をもたらした。
  • 経済的被害: 東日本大震災は、経済規模の大きい日本を襲ったため、経済的被害額はスマトラ島沖地震を大きく上回った。
  • 国際社会への影響: スマトラ島沖地震はインド洋全体に影響を与え、国際的な支援のあり方や、開発途上国における防災体制の構築が大きな課題となった。 

②令和6年能登半島地震とトルコ・シリア大地震の違い

項目 トルコ・シリア地震(2023年) 能登半島地震(2024年)
発生日時 2023年2月6日 2024年1月1日
マグニチュード M7.8 M7.6 
最大震度 現地の震度は日本の震度階級に換算すると、一部で最大震度7に相当。 石川県輪島市と志賀町で最大震度7を観測。
津波 津波は発生しなかった。 石川県の金沢で80cm、山形県の酒田で0.8mの津波を観測したほか、日本海沿岸の広範囲で津波を観測。
死者数 トルコとシリア合わせて5万6,000人以上(その後、増加)。 災害関連死を含め約679人(2025年10月22日時点)。
建物被害 トルコ国内で20万棟以上の建物が倒壊または大破。 全壊6,445棟を含む約8万7,557棟に被害(2024年10月時点)。
インフラ被害 内戦の影響でシリアのインフラが老朽化しており、被害が拡大した。 道路網の寸断、土砂災害、火災、液状化現象など。

被害の違いを生んだ要因

  • 耐震性の違い: トルコでは建物の耐震性が不十分だったことが被害を拡大させました。一方、日本では厳しい耐震基準が定められており、被害をある程度抑制しました。
  • 震源の深さ: トルコ・シリア地震では比較的浅い場所で巨大地震が連続発生し、広範囲にわたって強い揺れが長時間続きました。能登半島地震も浅い震源でしたが、内陸での直下型地震であったため、局所的に強い揺れが集中しました。
  • 地域の特性: 能登半島地震では、古い木造家屋が多く倒壊する一方、トルコでは都市部の高層ビルが倒壊したことが特徴的でした。
  • 社会情勢: シリアでは長年の内戦による社会基盤の脆弱化が被害を深刻化させました。

マグニチュードだけ見れば同程度の規模の地震でしたが、耐震性の違い社会的・経済的背景地域特有の建物の構造といった要因が、両地震の被害の規模や特徴に大きな差をもたらしました。

日本の優れた防災施策

  • 定期的に見直され、しかも違反を許さない「耐震基準」
  • 緊急地震速報、即時の津波警報の仕組み
  • 新幹線は過去の大地震でも死者を出したことがない
  • 全国に整備されている「ハザードマップ」がスマホで簡単にチェックできる
  • 危険度分布キキクル、川の水位情報、ナウキャストなどのリアルタイム水害把握
  • 災害発生時に即復旧が開始される道路、電気ガス水道インフラ
  • 複数キャリアによる携帯電波網、災害時の応急復旧の計画など
  • おいしい備蓄食、フェーズフリーという概念での防災グッズの各種
  • 子どものころからの徹底した防災教育、防災訓練、地震に関する知識、プレートテクトニクスを当たり前と思えるのはすごいことでは

もちろん課題もあります

  • 既存の耐震基準だけでは建物を守れない、耐震等級3の普及や地盤改良などが必要
  • 緊急地震速報や津波警報は出るが、個々人が行動を取れるかはまた別の問題
  • ハザードマップは充実しつつあるが、まだ全てのリスクをカバーできていない。内水氾濫への対応も重要
  • 災害発生後の復旧についても、能登半島地震の被災地の多くは今だ手つかずの場所も多い、過疎地域の災害復旧は今後の課題
  • 電気ガス水道インフラは、災害が生じなくとも老朽化による被害が問題
  • 備蓄食や防災グッズは充実しているが、個人が購入するかは別の問題
  • 子どもへの教育はまだまだ必要、特に18歳に対する「家選び」の知識
  • 災害発生時の避難所運営、体育館雑魚寝問題はまだ解決していない

など、優れた防災施策は多くあるが、「想定外」への災害への備えを含め、まだまだ改善すべきことも多い。既存の良い取り組みは生かしつつ、今後の改善は自助・公助共に大いに求められる。防災庁にも期待したい。と言うところでしょうか。

本日も、ご安全に!

本日は「日本と海外の防災の違い」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

 

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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