Voicyそなえるらじお #1216 香港で生じた大規模タワマン火災、日本の現場や対策との比較の話
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、11月28日(金)、本日も備えて参りましょう!
香港で生じた大規模タワマン火災
本日は「香港で生じたタワマン火災」のお話をしたいと思います。
※一部Geminにて原稿を作成しています
香港・高層住宅「宏福苑」大規模火災レポート
2025年11月26日に香港で発生し、甚大な被害をもたらした高層住宅火災について、現在までに判明している事実、原因、そして日本の事例と比較した建設・規制の課題をまとめました。
(2025年11月28日現在)
1. 被害状況と発生からのタイムライン
香港・新界(サンガイ)地区の大埔(タイポー)にある高層住宅団地「宏福苑(ワンフックユン)」で発生した火災は、改修工事中の足場を伝って瞬く間に拡大しました。
■被害の規模
建物: 全8棟のうち7棟に延焼。約2,000戸が被災。
死者: 少なくとも44名〜55名以上(捜索進行中のため変動あり)。
安否不明: 依然として200名〜279名以上と連絡が取れていません。
特徴: 建物全体が工事用カバーで覆われていたため、発見が遅れ、煙と熱が充満しました。
■発生の経緯(タイムライン)
11月26日(水)15:00頃: 竹の足場とネットから出火。強風により爆発的な速さで延焼。
11月26日 夜: 消防が危険度を最高レベル「5」に引き上げ。爆発音と黒煙が街を覆う。
11月27日(木): 李家超行政長官が会見。工事関係者3名を逮捕。
11月28日(金): 鎮火するも内部捜索が難航中。
2. 火災原因:なぜここまで拡大したのか
最大の要因は、香港特有の建築慣習と、現場での安全管理違反が複合したことでした。
■竹の足場(バンブースキャフォールディング) 乾燥した竹が燃料となり、建物全体を包む「巨大な薪(まき)」のような状態になりました。
■可燃性素材の不正使用 本来は難燃性が求められる現場で、窓の保護などに**「発泡スチロール板(フォームボード)」**が使われていました。これが着火剤となり、火勢を加速させました。
■煙突効果 外壁と工事用ネットの隙間を熱風が駆け上がり、下層階の火が瞬時に最上階まで到達しました。
3. 日本と香港の比較:建設現場とリスク
今回の火災原因(足場・可燃物)と、日本における類似リスク(大阪の事例)を比較・整理します。
■足場と養生資材の違い
足場の材質
香港:竹(可燃) … 安価だが乾燥すると燃えやすい。
日本:鋼鉄(不燃) … 法規制により鋼管足場が義務化されており、足場自体は燃えない。
養生シート
香港: 難燃性義務があるものの、現場で不徹底なケースが多い。
日本: 消防法により**「防炎物品(防炎ラベル付き)」**の使用が徹底されている。
■日本の盲点:大阪・道頓堀 雑居ビル火災(2025年8月) 「日本は鉄の足場だから安全」とは言い切れません。日本でも**「建物の外側」**を伝う火災は発生しています。
事例: 2025年8月、大阪・道頓堀で発生した雑居ビル火災。
原因: 外壁に設置された巨大な屋外広告(看板)。
共通点: 経年劣化したビニール系素材の看板が燃え上がり、香港の事例同様、**「窓の外から」**上層階へ延焼しました。
4. 今後の動き:規制強化と教訓
今回の惨事を受け、香港政府は建設業界の常識を覆す改革に乗り出しています。
■香港政府の対応
「脱・竹製足場」の加速: 民間マンションの改修工事においても、燃えない**「金属製足場」**への移行を義務化する方針。
可燃物の完全排除: 工事現場での発泡スチロール板使用を即時禁止し、特別チームによる取り締まりを強化。
■私たちへの教訓 工事中のマンションや、古い看板に覆われたビルは、通常時とは異なる火災リスク(外部延焼)を抱えています。「工事中=可燃物の殻で覆われている」という認識を持つことが重要です。
本日も、ご安全に!
本日は「香港で生じたタワマン火災」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!