Voicyそなえるらじお #1067 ハザードマップ・防災アプリ・連絡ツール…デジタルで備える防災
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月18日(金)、本日も備えて参りましょう!
デジタルで備える防災
本日のテーマは「デジタルで備える防災」のお話です。
今回はVoicyのトークテーマより、「デジタルで備える防災」のお話をいたします。
デジタルとはなにか
本日のテーマ「デジタル」ですが、そもそもデジタルとはなんでしょうか。デジタルという言葉は本来、「離散量」と呼ばれる、とびとびの値しかない量を意味する言葉です。これの対となっているのが「アナログ」ですが、アナログという言葉は「連続量」と呼ばれる、区切りなく続く値を持つ量を意味しています。
と言っても、へぇそうなんだ、以外の感想は持ちにくいと思いますので、ここでは「デジタル」のことを簡単に、「紙以外の媒体で扱える情報」だと定義して、お話をしたいと思います。紙に書かれている情報は従来のアナログ、スマホやパソコンで扱える情報が「デジタルで備える防災」の対象ということです。
アナログとデジタル
例えば従来のアナログな防災では、ハザードマップは紙の地図で確認し、防災に関する知識は紙の本で学び、備蓄品の管理や避難所の運用は紙の書類で行ってきました。アナログ=紙媒体の強みは、停電に強いこと。デジタル媒体は基本的に電気がなければ使えませんが、紙は紙ですので、全身が燃えているメラメラ星人以外であればどのような状況でも扱うことができます。
災害時には停電が生じがちですので、情報をあえてアナログな紙媒体で運用することは、防災的にも重要な備えとなります。一方、近年のインフラの進化、ポータブル電源や電気自動車の普及、通信環境の強靱化などにより、災害時にもデジタルな媒体を安定的に使える様になってきました。そのため、平時に便利なデジタルツールを、災害時にも使用するという変化が生じているのです。
重ねるハザードマップ
では、デジタルな防災の事例をご紹介したいと思います。
事前の防災でまず活用いただきたいのは、なんと言ってもハザードマップです。津波・高潮・洪水・土砂災害などの自然現象が生じた際、どの地点にどのような影響が生じるのかを示した地図がハザードマップですが、従来はアナログな紙媒体での運用が主流でした。ハザードマップは自治体が作成しますが、基本的には市町村の紙の地図上に災害情報が表示されてハザードマップになります。
一方、自宅と学校や職場が別々の街にある場合、また企業がハザードマップを確認する際、複数のエリアにまたがる拠点の情報をまとめて見たい場合、紙の地図ですと対象となる自治体全ての地図を取り寄せる必要があり、なかなか大変です。そこで活用いただきたいのが、国土交通省の重ねるハザードマップです。
重ねるハザードマップはWEBで見られる地図で、スマホやパソコンで全国のハザードマップをシームレスに閲覧できるサービスです。市町村の途切れなく、必要な範囲のハザードマップを連続的に見られるため、自宅や会社の周りだけでなく、旅行や出張先などでも、その場で津波や洪水の情報を確認することができます。これは紙の地図ではできないことで、「デジタルで備える防災」の好事例と言えます。
重ねるハザードマップは2005年に運用が始まったシステムでしたが、情報の追加やリニューアルが行われるたびに使いやすく進化しています。登録不要・無料で使えますので、ぜひお手元のスマートフォン・パソコンで、重ねるハザードマップと検索して活用してみてください。
防災アプリ
災害発生時に役立つデジタルな防災と言えば、スマートフォンやパソコンで使用できる防災アプリが役立ちます。特におすすめの防災アプリは、Yahoo!防災速報アプリと、NERV防災アプリの2つですが、これらのアプリをインストールしておくことで、災害情報をすばやく収集し、不意打ちによる逃げ遅れを防ぐことができるようになります。
緊急地震速報、津波警報、自治体から発表される避難指示などの避難情報、気象庁から発表される各種の防災気象警報、Jアラートによる弾道ミサイル情報、さらには熱中症警戒アラートや、近所で生じている詐欺電話の注意情報まで、すばやくキャッチすることで避難や防災対応を行えるような情報が、アプリから通知されます。
多くのスマートフォンや携帯電話には、これらの緊急通知を受け取る機能が標準で備わっていますが、専用の防災アプリを使うことで、より見やすくなったり、受信する条件を設定できたり、またアプリ無しではできない、Wi-Fiや固定のインターネットで情報を受信したりと、使い勝手を大きく改善することが可能です。
従来のアナログな手法では、テレビやラジオから一斉に配信される情報を受け取るしかありませんでしたが、スマートフォンと防災アプリを活用することで、自分自身に最適化された防災情報を、いつでも、手元で、受信することができるようになりました。Yahoo!防災速報アプリやNERV防災アプリは基本無料で使用できます、ぜひご活用ください。
連絡ツール
災害時には緊急連絡や安否確認も重要です。従来は電話を用いた連絡手段が唯一で、これを活用した災害用伝言ダイヤル171というサービスも存在します。しかし、連絡ツールはデジタルを用いた方が圧倒的に便利です。インターネットやスマートフォンの普及に伴い、E-mailやアプリによる連絡が使いやすくなり、さらに近年の携帯電波の強靱化や衛星通信の標準化により、災害時の安定度が大変高くなりました。
例えば多くの方が平時に使っているLINEは、2011年の東日本大震災で、電話やE-mailが使用できなくなったことを受けて誕生したサービスで、平時にも非常時にも欠かせない連絡ツールとなっています。LINE以外にも、各種のメッセージアプリやSNSが普及し、スマホと携帯電波が生きている限り、いつでもどこでも連絡を取り合えるようになりました。この辺りは最も進化した「デジタルで備える防災」と言えます。
これらのツールを災害時に確実に使用するため、日頃から電源の確保をすることが重要です。毎日持ち歩くならばモバイルバッテリーを、自宅に据え置きにするならコンセントの刺せるポータブル電源を、防災リュックに入れっぱなしにするなら乾電池タイプのスマホ充電器を、それぞれ使い分けるのがおすすめです。
昨日の放送では、スマホと衛星が直接つながる「au Starlink direct」のご紹介をしましたが、近年はスマホなどのデジタル媒体だけでなく、通信回線にも劇的な進化が生じています。アナログな紙は災害に強く、デジタルは災害時に使い物にならない、という常識が大きく変わりつつあるのが、この数年間で生じている進化です。これは防災的にも大変に素晴らしいことと言えます。
VACAN
ということで、いくつかの「デジタルで備える防災」事例をご紹介しました。
ちなみに今回のトークテーマは、株式会社バカン(VACAN)によるスポンサードテーマということですが、VACAN社は混雑状況をリアルタイムで可視化するサービスに強みを持っており、例えば避難所の受付や避難者名簿の管理、混雑状況の可視化、物資の在庫管理や外部との支援要請のやり取りなどを行えるサービスを提供しているそうです。
こういうお話を聞くと、南海トラフ巨大地震や首都直下地震で、全てがメチャクチャになっている状況でデジタルツールなんて使えるのか。などと考えたくなりますが、近年の通信環境の進化により、メチャクチャな災害時にもスマホやパソコンによる情報管理が行える可能性は大きく高まりました。
また、台風や大雨の事前避難などでは、まだ災害が生じる前に避難所を立上げ、避難を行います。この時、最寄りの避難所の混雑状況が分かったり、避難所運営がデジタルで効率的に行われるというメリットも得られます。デジタルツールは必ずしも全てがメチャクチャな災害時だけに使われる訳ではない、と考えることも重要です。
好むと好まざるとにかかわらず、世の中のデジタル化の流れは止まりません。そして、今この放送をお聞きくださっているということは、それだけで「デジタルで備える防災」に参加していることになります。スマホが使える時点で、あなたは相当ハイレベルなデジタルツールを活用しています。便利なデジタルツールを、ぜひ活用して参りましょう。
本日も、ご安全に!
本日は「デジタルで備える防災」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!