Voicyそなえるらじお #1060 自宅が津波避難ビルの場合、災害時に何かしなければならない?
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月9日(水)、本日も備えて参りましょう!
解錠手段がある
本日のテーマは「津波避難」のお話です。
前回の放送では、津波避難ビル・タワーのお話をしましたが、今回も関連したご質問をコメント欄に頂きましたので回答でお話をいたします。コメントをくださいましたのは「さくらもち」さん。
『高荷先生こんにちは。津波避難ビルに指定されているマンションで今年、防災担当になったのですが…避難ビルに住む者としては、津波が来た場合、共有の場所は、ほぼ一階なので、おのずと上階の廊下(個人の玄関前)や階段への避難になると思います。
その時、居住者はどう対応すればよいのでしょうか?避難ビルに避難された方は、その後すみやかに避難場所に移動できるのでしょうか?災害時には、人命が最優先とは思いながらも、トラブルも発生しそうで不安です。そこのところもアドバイスいただけたら嬉しいです。』
避難場所と避難所について
自宅のマンションが津波避難ビルに指定されていたら、津波発生時にどうすればいいのか?これはなんとも気になることかと思います。
なお、マンションが津波避難ビルなどに指定されていない場合でも、例えば津波に巻きこまれた場合は低層フロアの住民が高層フロアの廊下などに避難せざるを得ませんので、津波の想定エリアにあるマンションや団地は、基本的に全ての建物において避難者問題が生じることになります。うちは津波避難ビルじゃないから関係無い、とはならないことは認識いただきたいと思います。
前提を整理します。災害時に逃げるための場所は2つあり、ひとつは津波や火災等から命を守るための避難場所、もうひとつは自宅をうしなった方が一時的に生活をするための避難所です。津波避難ビルやタワーは、命を守るための避難場所となります。
避難場所の役割は緊急避難です。そこに滞在し続けることは想定されていません。津波避難であれば、周囲が水没している間は津波避難ビルなどにとどまることになりますが、水が引いて、かつ再度の浸水の恐れがなくなれば、具体的には大津波警報・津波警報・津波注意報が解除される状況となれば、津波避難ビルを出て自宅へ帰宅するか、自宅が破壊された場合は最寄りの避難所などへ身を寄せることになります。
大地震などで津波が発生し、津波避難ビルなどへ避難を行った場合も、周囲が水没している間はその場に留まることになりますが、地上へ安全に降りられるようになった段階で、避難者は避難場所を出て避難所へ移動することになります。
自宅のマンションが津波避難ビルに指定されたら?
ではご質問のように、自宅のマンションや団地が津波避難ビルに指定され、実際に大地震などが発生し、自宅の前の廊下などに多くの避難者が集まってくる状況となった場合は、なにをどうすればよいのでしょうか。基本的な考え方として、避難者に手を貸すか、自宅に留まるかは自由です。
避難者に提供されているのは、津波避難ビルという場所の提供のみで、そこで滞在するための準備は避難者が防災リュックを持参するなどして、自助で行うことが原則となります。そのため、津波避難ビルの住人が、自宅のドアの鍵を閉めて、避難者に対してはなにもせずに自宅に留まることになんら問題はありません。
自宅の玄関の前に見知らぬ他人がいることは気になると思いますが、状況としては周囲が津波に見舞われて大惨事になっています。恐らく回りに人がいることよりも、周囲の状況の方がはるかに気になる状態であるかと思います。また水が引いて、再度の津波の心配が無くなるまでは、どうせ自分たちも地上へ降りることはできませんので、ヒッソリと自宅に留まっていて問題はありません。
この時、玄関前の避難者を室内に入れてあげる、トイレのスペースを貸す、水や食料を分ける、かどうかは自由です。これは共助の範囲になりますが、そうした支援を行うかどうかは個々人の判断で好きにすれば良いですし、支援をしなかったからといって、誰にも攻められる言われもありません。あくまでも好意の範囲であり、義務でもなんでもないからです。
現実的には、避難者が少数であり、かつ困窮していそうならば支援をする。逆に大量の避難者が廊下に詰めかけている状況であれば、玄関の鍵をかけてヒッソリとじたくに留まる、という状況になるかと思います。そしてそれで良いと思います。自宅の備蓄は本来自分と家族のためのものであり、人に分け与えるものではありません。そういう考え方でよいと思います。
支援をするとしたら、マンションが津波避難ビルに指定された段階で、どういう共助を行うべきかを事前に取り決めて、準備をしておくべきです。私がマンションの当事者であれば、津波避難ビルスペースとして開放するフロアを事前に定めておき、また行政の予算で最低限の物資の備蓄を準備しておきます。
実際に津波が発生した際には、避難スペースとなっているフロアの住民には、玄関開放はトラブルを生む恐れがあるため自宅に留まってもらい、より高層フロアの住民の協力で、避難者のサポートを行える様な体制にするかと思います。もちろん生活支援ではなく、避難している数時間から数日の間死なない準備ですので、サポートと行っても最低限だろうとは思われます。
本日も、ご安全に!
本日は「津波避難」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!