次亜塩素酸水の効果・殺せるウイルスや細菌の種類
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執筆者:高荷智也
次亜塩素酸水は非常に素早い殺菌能力を持っていますが、具体的にどのようなウイルス・細菌に、どのくらい効果があるでしょうか。厚生労働省を始め様々な研究機関が行った実験結果をもとに、次亜塩素酸水の殺菌効果について、具体的な解説をいたします。
実験で比較に用いられた殺菌剤
1)次亜塩素酸水(微酸性次亜塩素酸水)…57ppm・pH5.2
「次亜塩素酸水は」厚生労働省の食品添加物として認められる電気分解方式で調製された微酸性次亜塩素酸水で、家庭向けに販売されている商品にも同じものが多くあります。
2)塩化ベンザルコニウム液…500ppm
「塩化ベンザルコニウム液」はいわゆる一般的な消毒殺菌剤で、ウェットティッシュや清浄綿などにも用いられています。商品名でいうと消毒剤の「オスバン」や「キレイキレイ」が該当します。
3)次亜塩素酸ナトリウム液…200ppm
「次亜塩素酸ナトリウム」は、漂白剤として用いられる消毒殺菌剤です。商品名でいうとほ乳瓶洗浄用の「ミルトン」や「チュチュベビー」をはじめ、漂白剤でおなじみの「ハイター」「ピューラックス」「ブリーチ」などが該当します。また純粋な次亜塩素酸ナトリウムに洗剤(界面活性剤)などを添加した「カビキラー」や「ドメスト」も同じ仲間です。
この3種類を下記の微生物に添加して、どのような殺菌効果が見込まれるかという実験がなされました。
実験で用いられた各種の微生物(次亜塩素酸水が有効な対象物)
1)大腸菌
大腸に多く生息する腸内細菌で基本的には無害なバクテリアです。0157をはじめとする一部の大腸菌が、病原性大腸菌として食中毒症状をもたらすことがあります。腸内に多く生息する菌なので糞便による水の汚染を図る指標としてよく用いられています。なお水道水からは「検出されてはならない」というのが指標です。
2)黄色ブドウ球菌
名前の通りぶどうの房のように集まった形をしている細菌で、皮膚や鼻の中などに高い確率で存在しています。人体内にある際には無害ですが、食べ物の中で増殖する際にエンテロトキシンという毒素を作り、これが人体に危害を及ぼします。この菌は酸素がなくても増殖し、多少の塩分があっても毒素を作るため、あらゆる食品が原因になる可能性があります。
3)MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
(2)の黄色ブドウ球菌の仲間で生物的な性質は同じですが、耐性遺伝子を持っており通常細菌を退治するための薬・抗生物質が効きにくくなっている性質を持っています。そのため健康な人にはあまり害を及ぼしませんが、病気などで抵抗力の落ちた人の体の中に入ると重症化することがあります。
4)サルモネラ
黄色ブドウ球菌などと並んで食中毒の原因になりやすい細菌で、鶏卵を原因とした食中毒が多く発生しています。65℃以上の加熱で死滅するためきちんと加熱調理をすることが予防のポイントです。
5)緑膿菌
緑膿菌は自然界に多く存在している細菌で、健康な人に感染をしても害を与えることはほとんどありません。しかし、緑膿菌はもともと消毒薬や抗菌薬に対する抵抗性が高い細菌であるため、免疫力が低下した病人には感染症を引き起こすことがあります。また(3)のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と同様、抗生物質などに耐性を示す菌が増加しており近年問題視されている細菌です。
6)レンサ球菌(人食いバクテリア)
連なった鎖のように配列して増殖をすることから「連鎖(レンサ)」球菌と名付けられた細菌です。近年ではいわゆる「人食いバクテリア」の名称で知られるようになっていますが、手足の壊死を伴うなどとてもひどい病気をもたらすことがあり、健康な成人に突然発症することがある恐ろしい細菌です。
7)枯草菌(芽胞)
枯草菌(こそうきん)は自然界に広く存在する細菌で、味噌や醤油のもろみのなかに多数存在し、納豆菌もこの一種です。健康食品として利用されることもあり、基本的に人体に悪影響をもたらすことはありません。枯草菌は芽胞(がほう)と呼ばれるきわめて耐久性の高い細胞を作り出し、100℃の熱湯煮沸でも死滅することはありません。
(※次亜塩素酸水はこんなに頑丈な細菌も殺せるよ、という証明のための選別ですね。)
8)カンジダ(カンジダ真菌)
カンジダは真菌というカビの一種に属する菌で、人体の各所に存在しています。健康な人であれば特に悪影響をもたらすことはありませんが、病気やストレス、疲労などで免疫力が低下していたり、抗生物質を飲んで体内の常在菌(よい菌)が減った場合、症状を発することがあります。
9)黒コウジカビ
いわゆる「普通のカビ」のことで、一部の種類にのものが「麹」として味噌や醤油などを作るために用いられています。
試験の実施と結果
実験では、(1)から(9)までの細菌や真菌(カビ)が入った溶液に、「次亜塩素酸水」「塩化ベンザルコニウム液」「次亜塩素酸ナトリウム液」を加えて、1分後、3分後、5分後に菌の数がどう減るか(つまり死滅するか)を試験しています。その結果が次の表です。
菌が入った試験水1 [ml](ミリリットル)(水なら1グラムですね)当たり、大腸菌なら430万個の菌が、黄色ブドウ球菌なら450万個の菌が入っています、すさまじい量の細菌ですね。これに殺菌剤をそれぞれ加えた結果、(1)の次亜塩素酸水については、枯草菌(こそうきん)以外の微生物については1分以内にほぼ全てが死滅しています。
枯草菌については、「塩化ベンザルコニウム液」と「次亜塩素酸ナトリウム」では5分間でも全く効果が見られませんが、次亜塩素酸水では3分以内に死滅させることができています。つまり、次亜塩素酸水(微酸性次亜塩素酸水)は、これかで一般的に用いられていた殺菌消毒薬や次亜塩素酸ナトリウムと比較して、同等以上の殺菌効果があるということが証明されたことになります。
その他の試験について
また上記以外の試験も実施されています。
食品に対しての殺菌効果
カットレタス、カットキャベツ、カイワレダイコン、鶏肉のささみについて、「微酸性次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」で洗浄をして、残留している菌の数を比較する試験を行っています。結果としてはいずれも菌の数が10分の1~100分の1に減少したのですが、特に次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムの処理と比較して、3分の1の濃度で同じ効果が得られています。