次亜塩素酸水と「薬機法(薬事法)・医薬部外品」の注意点
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執筆者:高荷智也
次亜塩素酸水は優れた殺菌消毒効果を持っていますが、医薬品として認定されていないため「除菌消臭」としか表記ができません。また人体への安全性が証明されていながら、医薬部外品ではないためその利用は「自己責任」となりますが、この背景を解説します。
「殺菌」や「消毒」という言葉と薬機法との関連
次亜塩素酸水の特徴は強力な殺菌消毒力にありますので、次亜塩素酸水の商品パッケージやメーカーのWebサイト、ネットショップにはこの効果が全面にうたわれています。ところがその表記の多くが「除菌・消臭」であり、「殺菌」や「消毒」という言葉はあまり使われていません。「殺」とか「毒」という言葉ではイメージが悪いためでしょうか?これには理由があるのです。
この「殺菌」や「消毒」という言葉は、薬機法(旧・薬事法)により「医薬品」や「医薬部外品」以外の商品には利用することが禁止されています。そして今現在、医薬品・医薬部外品として認可されている次亜塩素酸水は存在しません。一方、「除菌」「消臭」「抗菌」などの言葉は医薬品などでなくとも使用できるため、多くの次亜塩素酸水が「除菌消臭剤」という形で販売されています。
※ただし厳密には、殺菌による菌やウイルスの除去のことを明らかな目的として「除菌」と表現している場合は、薬機法(薬事法)に抵触します。そして次亜塩素酸水の特性上、こうした表現をしないわけには行きませんので、なんともグレーな形で販売されているというのが現状でもあります。
また、次亜塩素酸水はノロウイルスに効果のある数少ない殺菌剤であり、またインフルエンザウイルスにも効果があることから、「ノロウイルスやインフルエンザの予防に効果的!」などの表現がなされていることもよくあります。しかし薬機法では「特定のウイルスや細菌名」を医薬品・医薬部外品が標榜することを禁止しているのです。
「細菌の除菌に効く!」や「ウイルス対策に効果!」という表現はよいのですが、「空間除菌でインフルエンザウイルスが死滅」とか「食中毒の原因となるO157や黄色ブドウ球菌に効果あり!」というような表現は禁止されています。次亜塩素酸水がウイルスに効果があるのは証明されていますから医薬部外品の認可を受ければよいのですが、そのためにはコストと手間がかかりますので、現実的にはグレー表現が続くことになるのだと思います。
きちんとした(様に見える)メーカーやネットショップでは、薬機法に対応していると思われますので、商品の紹介は「除菌」に統一されており、「殺菌」や「消毒」という言葉は出てきません。逆にこうした言葉を使っている商品やショップの場合は、意識の面で注意が必要です。
※なお、当サイトでは「殺菌」や「消毒」という言葉を多用しておりますが、薬機法が規制しているのはあくまでも商品の標榜に対する表現ですので、情報としての表現においては問題がないのです。単なる情報にも規制が入ってしまったら、それはもう言論統制になってしまいますからね。
参考資料について
- 厚生労働省の関連法律
- 日本二酸化塩素工業会の参考資料
「予防」や「治療」、人体への作用表現と薬機法の関連
さらに薬機法(旧・薬事法)では、医薬品・医薬部外品ではない製品に対して、人体に作用するような表現を禁止しています。ですので、商品としては雑貨に分類される次亜塩素酸水の場合、「治療」「予防」「治る」というような表現で効果をわらわすことはできません。また「薬」という言葉を入れることも厳禁です。
ですから、「次亜塩素酸水で水虫治療」はもちろん、「次亜塩素酸水で歯周病を予防」や「次亜塩素酸水で空間除菌をしてインフルエンザを予防」ですとか、「次亜塩素酸水をうがい薬に」というような表現はできません。効果はあります、それは証明されています、しかし医薬部外品の認定を取らない限り、効果をダイレクトに表現することはできないのです。
ちなみに、薬機法は人間だけでなく動物用商品についても規制の対象ですので、医薬品・医薬部外品ではない次亜塩素酸水については、ペットに直接作用する効果をうたうこともできません。「ペットの臭いの消臭に」ならばOKですが、「ペットの除菌に」はNGです。
除菌系の効能は、人もしくは動物に対して直接作用するものは確実にNGですが、間接的な作用の標ぼうもNGとするのが行政の考え方です。つまり、人もしくは動物にスプレーを吹き付けて除菌するということは人もしくは動物への直接的な除菌なのでNGであることは自明ですが、物(寝床や食器等)を媒介した間接的な除菌効果も、「寝床等に吹き付けてペットを菌から守る」という医薬品的な意味になりうるので問題があるということです。
次亜塩素酸水と薬機法(薬事法)の関係を紹介した理由
…と、次亜塩素酸水を販売するメーカーや店舗側からすると、はた迷惑な内容の記事をここまで執筆しておりますが、私は法律家でも行政の監督官でもありませんので、薬機法(薬事法)に対応できていないメーカーや店舗をどうこうする、というつもりは毛頭ありません。事実、次亜塩素酸水は各省庁や公的な研究機関、また次亜塩素酸水を販売しているショップ独自の実験により、その効果が証明されており、すでに幅広い場所で利用されています。
その一方、私自身が一消費者として次亜塩素酸水を購入・利用する立場であり、どうせ購入するのであれば信頼できるメーカーの次亜塩素酸水を、信頼できるショップから購入したいという思いが当然あります。であればこそ、次亜塩素酸水のメーカーやショップを比較検討し、より信頼できる安全な商品を選ぶための選択肢として、商売において最も基本的な事項のひとつである「法令遵守」を判断するための方法をご紹介しました。
次亜塩素酸水の効果は法律上には関係のないところで決まりますから、薬機法を遵守していることが次亜塩素酸水の効果の高さや安全性を証明することにはつながりません。しかし、法令を守れない商品が信頼できるものなのかといえば、それも疑問符がつきます。最終的にどの次亜塩素酸水を選ぶかは自分自身ですが、商品比較・選択手段のひとつとして、法令遵守という見方があることを知っておいて損はないはずです。