殺菌消毒剤と除菌消臭剤、電解水と機能水の機能と違い
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執筆者:高荷智也
様々な種類がある除菌グッズについて、原材料や製造方法、特性や利用目的の違いを、「除菌消臭グラフィック」で徹底解説します。ハイターなどの塩素系除菌剤や注目の次亜塩素酸水、アルコール除菌剤、クレベリン、ファブリーズ、サンポールの違いが一目瞭然。
殺菌消毒剤や除菌消臭剤には、ざっくりどのような物があるのか?
いわゆる除菌消臭剤には色々な種類のものがありますが、それを一覧かというかある程度分類して示したのが下記の図です。
※クリック(タップ)で拡大します。またPDF版も作りましたのでじっくり見たい方はこちらをどうぞ「備える.jp_電解水・除菌水とその仲間達の種類.pdf」
※この図の内容が完全に正しいかという保証はしかねます。また間違いを見つけるたびに修正をしますので、この図(画像ファイル)の引用はせず、当ページへのリンクをお願いします。
殺菌消毒・除菌消臭に用いられるものとしては、次亜塩素酸(HClO)を有効成分とする「塩素系除菌剤」がまずあげられます。ハイターやミルトンに代表される「次亜塩素酸ナトリウム」や、近年利用が拡大している「次亜塩素酸水」などが代表的です。次にファブリーズやリセッシュに代表される有機系成分の消臭剤、アルコール系の除菌剤、クレベリンに代表される二酸化塩素の除菌剤、オゾン水を用いた除菌水などがあげられます。
また除菌剤ではありませんが隣接するものとしては、サンポールでおなじみの「塩酸系洗剤」、界面活性剤無しで洗剤代わりに使える「強アルカリ性電解水」などが、混乱する対象物として存在します。さらに似た名前の水として、「炭酸水」「弱酸性水」「アルカリイオン水」がありますが、これらに除菌力や消臭力はなく、飲んだり料理に使ったり洗顔に用いたりします。
次亜塩素酸(HClO)を主成分とした除菌消臭剤
殺菌消毒剤には塩素系、次亜塩素酸(HClO)を効果主体としたものが多くあります。最もメジャーなものは「次亜塩素酸ナトリウム」ですが、希釈しなければ毒性が強くて使えず手間がかかることから、近年は「次亜塩素酸水」をはじめとする電解酸性水の利用が広まっています。
また次亜塩素酸系の殺菌消毒剤はpH(ペーハー)によっておおよその種類が定まってきますが、基本的な性能(殺菌性能)に大きな差はありません。差があるのは、作り方、コスト、寿命、使い勝手などです。下記にそれぞれの特徴を紹介します。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO):原液のpH12.5~13.5程度
次亜塩素酸ナトリウム、別名を次亜塩素酸ソーダは古くから使われている殺菌消毒・漂白剤です。赤ちゃん用のミルトン・ピューラックス・チュチュベビー、漂白剤として使うハイター・ブリーチ、カビ落としとして使うカビキラー・ドメストといった、商品名を聞くとイメージできるでしょうか。あの独特の塩素臭がするあの商品達が、次亜塩素酸ナトリウムです。
次亜塩素酸ナトリウムは価格が安く入手もしやすいため、色々な場所で活用されています。しかし水で希釈して濃度を下げなければ使えないという面倒くささ。原液が肌や目についた場合や誤飲した場合の危険性の高さ。独特な塩素臭などがあるなど、使い勝手が悪いのが難点です。漂白効果が強いため、漂白用途であれば次亜塩素酸ナトリウムの出番ですが、殺菌消毒については次亜塩素酸水をはじめとする機能水などの利用が広まりつつあります。
次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2)
次亜塩素酸カルシウム、別名をカルキ、またはさらし粉は、プールの消毒などによく利用されます。小中学校のプールなどに入れる、丸くて白いあの固まりが次亜塩素酸カルシウムです。丸く固められた次亜塩素酸カルシウムはゆっくりと溶けていくため、プールの塩素濃度を一定に保つ働きがあり多用されています。家庭用に使用する機会はほとんどないでしょう。
なお「カルキ」とはオランダ語で「石灰(酸化カルシウム)」のことを意味する言葉だそうです。
次亜塩素酸水(HClO)
次亜塩素酸水、別名を電解酸性水は近年特に利用が広まってきている機能水で、殺菌消毒・除菌消臭・歯科治療などに幅広く使われています。得られる効果が次亜塩素酸ナトリウムと近いため代替として使われることも多いのですが、全く異なる性質を持っているため同じ使い方をすることはできません。
次亜塩素酸水は、希釈した次亜塩素酸ナトリウムよりも強力な殺菌消毒効果を持っていますが、厚生労働省により食品添加物に認定されていたり、農林水産省により特定農薬(オーガニック向けの農薬代替品)として認定されているなど、人体に対する安全性も兼ね備えていることが特徴です。しかし次亜塩素酸ナトリウムと比較して保存期間が短いため、これまでは生成装置を保持する工場や店舗での利用が中心でした。
次亜塩素酸水は厚生労働省の定義で次の3種類に分けられています。
- 強酸性次亜塩素酸水(強酸性電解水)…pH2.7以下
- 弱酸性次亜塩素酸水(弱酸性電解水)…pH2.7~5.0
- 微酸性次亜塩素酸水(微酸性電解水)…pH5.0~6.5
このうちもっとも保存がしやすい「微酸性次亜塩素酸水」が、家庭向けの除菌消臭剤としてドラッグストアやネットショップで販売されるようになっています。コストも比較的安価で、効果・安全性ともに高いものですのでおすすめです。
次亜塩素酸水についてはこちらのページで詳細に解説しています。
中性電解水(pH6.5~7.5)
中性電解水は次亜塩素酸水に似た性質をもつ電解水です。微量な塩素を含んでいる、いわゆる「普通の水道水」を電気分解することで生成ができるため、ランニングコスト(運転費用)がきわめて安いことが特徴です。また中性であることから安全性も高いのですが、含まれる有効塩素濃度が低いため殺菌消毒効果については他の電解水と比較すればやや劣ります。
中性電解水単体で販売されることはなく、基本的には家庭用・業務用の電解装置を水回りに設置して利用することになります。
電解次亜水(pH7.5以上)
電解次亜水も次亜塩素酸水に似た性質を持つ電解水です。水道水に食塩をとかした食塩水を電気分解することで生成することができます。中性電解水同様この水単体での販売はされていませんので、業務用の製造装置を設置して利用するほか家庭用の製造装置を購入して自家製造することが基本です。家庭向けとしては下記の様な商品が販売されています。
ペットの消臭などにも効果を発揮しますので、複数のワンニャンやピヨがいる家庭で、次亜塩素酸水を購入するのではコストパフォーマンスが悪いという場合に、家庭用の生成装置を購入して利用する場合などにはオススメです。
次亜塩素酸“以外”を主成分とした除菌消臭剤
次亜塩素酸(HClO)以外を主成分とした除菌消臭剤も多くあります。テレビCMなどでおなじみの商品はむしろこちらでしょうか。それぞれ性能や効果が異なりますので、目的によって使い分けることになります。
有機系成分の消臭剤
有機系成分の消臭剤は、ファブリーズやリセッシュという商品名を聞くとイメージができるでしょうか、テレビCMなどでおなじみの消臭剤です。使い勝手はよいのですが、除菌効果はない(かあまり期待できない)ため、あくまでも消臭剤として利用するのが主目的です。
アルコール系(エタノール)除菌剤
揮発成分が高くすぐに蒸発するため、手指の消毒などで使い勝手がよく使われています。漂白作用がないため色落ちしやすい布などの除菌には適していますが、手指に用いた場合はアルコールで手荒れをおこす場合があり、注意が必要になります。またノロウイルスに対しては効果が薄いため、ノロウイルス対策には別の除菌剤を用いる必要があります。
二酸化塩素(ClO2)
二酸化塩素を用いた商品は大幸薬品のクレベリンが有名ですが、その他メーカーの商品はほとんどありません。二酸化塩素は高い殺菌消毒効果を持っており、2009年にパンデミックを起こした豚インフルエンザの際に注目を集めて認知が高まりました。しかし次亜塩素酸水などに比較すると科学的なエビデンス(根拠)に乏しいことと、価格がやや高価なため、「値段に糸目はつけない、新しくて効果の高そうな殺菌消毒スプレーを使いたい」という場合におすすめとなっています。
オゾン水(O3)
オゾンは多量に吸い込むと猛毒で大変危険ですが、水に溶かして少量を利用する分には人体に対する影響がなく、次亜塩素酸水を上回る強力な殺菌消毒効果をもっているため、注目を集めている機能水です。また塩素を含んでいないため独特の臭いがなく、洗浄殺菌に用いた後も洗い流す必要がないなど、使い勝手の面でも優れています。
一方、長期間の保存ができないためオゾン水が単体で販売されることはなく、基本的には工場や飲食店などの業務用途として、生成装置とセットで利用されることになります。とにかく最高性能の除菌がしたいという場合にオススメです。
除菌消臭剤ではないが名前がにている仲間達
次亜塩素酸水などと同じく電気分解で生成される機能水や、名前は似ているが用途が違う洗剤などを紹介します。
塩酸(HCl)
塩酸は次亜塩素酸水などの電解水の材料としても用いられる物質ですが、家庭用としてはサンポールでおなじみの塩酸系洗剤として利用されています。塩酸は次亜塩素酸ナトリウム系の洗剤などのアルカリ性の水溶液と混ぜると、強烈な塩素ガスを大量に放出する「混ぜるな危険」の筆頭物質ですので、取り扱いには注意が必要です。
強アルカリ性電解水(pH10.5~11.5)
強アルカリ性電解水は、強酸性次亜塩素酸水(強酸性電解水)を製造する際の副産物として製造される電解水(機能水)です。強いアルカリ性であるため汚れを落とす洗剤の代わりに使用できます。界面活性剤を用いる”いわゆる洗剤”と異なり、性質としては水であることから環境負荷が小さく注目を集めています。
一方で、「水なので肌荒れも小さく口に入っても大丈夫」という説と、「水とはいえ強アルカリ性なので肌荒れはするし目や口に入ったら大変だ」という両説があげられており、実際の使い勝手については利用者自身で判断をする必要があります。
製造装置を導入している場合は、まず強アルカリ性電解水で洗浄し、次に強酸性次亜塩素酸水で殺菌をするという理想的な使い方ができるので便利です。家庭向けには、強アルカリ電解水を詰めたボトルが「水のような洗剤」として販売されているので、これを用いることができます。
アルカリイオン水・弱酸性水
アルカリイオン水と弱酸性水は、家電メーカーなどが販売している「整水器」を用いることで生成できる電解水です。水道水を濾過して純水にし、これを電気分解することで陽極・陰極の両方から2つの水が取り出せる仕組みです。
アルカリイオン水は健康のための飲用に用いたり(健康のためになるかはまた別問題ですが)、料理に使うことができます。弱酸性水は飲用には適しませんが、人間の皮膚のphに近いという性質を生かして洗顔などに用いることができます。ただし、名前こそ次亜塩素酸水をはじめとする電解水に似ていますが、殺菌消毒効果や洗浄効果はありませんので、あくまでも飲用・料理用・洗顔用になります。
炭酸水
飲むと美味しい炭酸水です、ハイボールや各種のソーダ割りに大活躍します。除菌消臭効果はありません。