備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

カセットガスボンベの規格・メーカー間の互換性

初回投稿日:

最終更新日:

執筆者:高荷智也

カセットガス器具とカセットガスボンベは「同一メーカーの物を使用する」ことが原則ですが、形状的には互換性があるため「物理的に使用」することは可能です。

カセットガスボンベの規格・メーカー間の互換性

カセットガスボンベのメーカー間の互換性

カセットガスボンベと各種のガス器具…カセットガスコンロ、カセットガスストーブ、カセットガス発電器などは、原則として「同一メーカー」の物を使うことが基本となります。メーカーなどが実施する安全試験も、原則としては自社製品同士でのテストとなりますので、ボンベと器具のメーカーは揃える必要があります。

一方で、あくまでも「自己責任」となりますが、異なるメーカーのボンベとカセットガス器具をまぜて使うことは、「物理的な形状」としては可能です。以下はその解説となります。

ボンベの互換性について

カセットガス器具は、JIS規格(日本工業規格)により仕様が細かく定められています。たとえばガスボンベの場合は、缶の直径、全長、切り込みの場所や大きさ、ノズルの長さなどが定められており、異なるメーカーのカセットガス器具であっても互換性があり、相互に使用することができます。

ガスボンベの中身であるLPガス(ブタン、イソブタン、プロパン)についても、どのガスがどの程度配合されているかはメーカーにより異なりますが、それぞれのガス成分そのものは同じですので、「ノーマルタイプ」「ハイパワータイプ」など、同じ用途でのガスであれば製品が異なっても(自己責任においては)同じように使うことができます。

と言うことで、現実としては異なるメーカーのカセットガスボンベと器具をまぜて使うことはできますが、これはあくまでも自己責任となり、安全面を重視する場合は推奨されません。また当然ながら、この使用方法においてカセットガス器具による事故が生じた場合、その責任をメーカーに取らせることはできません。

基本は非推奨、あくまでも自己責任で

JIS規格により定められている仕様ですが、わずかなサイズの違いは許容されていますので、使用するボンベと器具の組み合わせによっては、微量なガス漏れなどが生じることもあり得ます。これについては各メーカーの試験では対象外となりますので、実際に使用してみなければ分かりません。

そして実際の製品には、「自社製品以外のカセットガス器具には使用しないように」と注意書きがあります。前述の通り、メーカーとしては自社のボンベと器具のみでの安全確認を行っているためであり、他社製品を使用した場合の不具合については責任を取ることができないためです。あくまでも「同一メーカーの器具を使う」のが原則となります。

上記を理解した上で、異なるメーカーのガス器具を使う場合は、ガス漏れや誤動作に注意して使用してください。具体的には、においを感じた、異常な音や燃焼が生じた、などの場合は即座に利用を中止する必要があります。

では、なぜ「物理的な形状」としては互換性が保たれているのでしょうか。それは防災領域における歴史的な背景があります。

カセットガスボンベの規格が共通化されている理由

カセットガスボンベを用いたガス器具は様々に存在しますが、その代表的な製品は卓上カセットコンロです。

カセットコンロは、1968年(昭和43年)にTOHO(東邦金属株式会社)が日本で最初にJIA(日本ガス機器検査協会)の認定を受け、翌年1969年(昭和44年)にイワタニ(岩谷産業株式会社)が日本で最初に販売を始めたのが普及の始めです。

1969年(昭和44年)以降、各メーカーが独自にカセットガスボンベやカセットガス器具を開発し、販売をしてきました。カセットコンロは家庭における利用の他、災害発生時における緊急用においても力を発揮しており、1978年(昭和53年)の宮城県沖地震、1983年(昭和58年)の釧路沖地震などでも、災害救助物資として数多く活用されてきました。

さらに、1991年(平成3年)に、JIS(日本工業規格)によってカセットコンロとカセットガスボンベの規格が定められましたが、この規格ではガスボンベのサイズなどが厳密に定義されておらず、異なるメーカーのガスボンベを使い回すことはできませんでした。そのためある問題が生じることになります。

1995年(平成7年)に生じた「阪神・淡路大震災」でも、救援物資としてカセットガスボンベと器具が提供されました。過去の災害と比較して被災者数が桁違いであり、数多くの器具が各メーカーより提供されましたが、ガスボンベの互換性が確保されていなかったために避難所などでは不便が生じ、ガスボンベや器具の規格を統一する必要性が広く認識されたのです。

そこで、1998年に卓上カセットコンロ、およびカセットガスボンベの規格が見直され、ボンベの直径、全長、切り込みの場所と大きさ、ノズルの長さなど、細かな点までサイズの指示がなされるようになりました。結果、メーカーは推奨しないものの、現実として異なるメーカーのカセットガスボンベを使い回すことができるようになりました。

あくまでも自己責任で

繰り返しとなりますが、カセットガス器具と各種のボンベは、原則としては同一メーカーのものを使うことが基本ですし、安全性を最優先する場合にも、同一メーカーの器具を使用してください。他社製品を用いて事故が生じた場合などは、各種の保障や保険請求に問題が生じる可能性もあります。

ただし、物理的な形状および中身については、各社共通のものとなりますので、「自己の責任」において異なるメーカーの器具を使用することは可能です。非常時などにボンベと器具のメーカーが異なる組み合わせしか準備できない場合においては、自己の責任において使用するのものやぶさかではない、という言い方はできるかと思います。

一方で、安価なボンベと高価なボンベは2倍ほどの価格差がありますが、それでも差額は数百円です。年間の使用量が数本程度であれば、同一メーカーの器具を使うのがよいでしょう。また、もしメーカーをまぜる場合も、安全のためにボンベは「国内メーカー」のもの、かつ「JIA認証」のマークがついている製品を選ぶことをおすすめします。

私の場合は…

ちなみに私自身も、カセットガス器具の多くはイワタニ製品を用いていますが、毎年数十本のボンベを消費するため、実際には安価なニチネン社のガスボンベを使用しています。これまで10年ほどこの組み合わせでガス器具(カセットコンロ・カセットたこ焼き器・カセットガスストーブ)を使用していますが、特に問題は生じていません。

ただしこれは「個人の経験談」であり、あくまでも「自己責任」におけるお話です。当記事を参考に事故などが生じた場合においても、当方では一切の責任を取ることはできません。個人利用における参考情報としてご活用ください。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

関連テーマ一覧

  1. 防災グッズ - 防災用品と備えの方法
  2. 電気・ガス・エネルギーに関する防災グッズ
  3. カセットガスボンベ

備える.jp 新着記事