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新型コロナウイルス感染症、何が問題で何に注視すべきか?

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最終更新日:

執筆者:高荷智也

中国を中心に感染拡大が続いている新型コロナウイルス、なんとなく「怖い」ですよね。私たち個人や家庭はいったい何をどうすればよいのか、整理してみましょう。

※2020年・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況は日ごとに変化しています。当記事は執筆時の状況を元に作成したものですので、さらなる最新情報が出ている場合はそちらを優先してください。

当サイトの「新型肺炎・COVID-19」特集ページはこちらです。

新型肺炎の何が問題なのか?

 世界的な大流行(パンデミック)を引き起こすかもしれない、国内で大流行を起こすかもしれない、これは確かに問題ですが、本質はここではありません。何が問題なのか、それは致死率(死亡者÷感染者)が高い(2%以上)ことです。

 「感染しても死なない・後遺症も残らない」ような感染症がパンデミックを引き起こしても、大きな問題にはなりません。しかし、感染したら100名中2名が死ぬ(致死率2%)ような感染症が大流行を引き起こすことは、大きな問題となります。

 現在の致死率2%、国内感染者が1,000名程度で収まれば、亡くなられた方と家族には大問題ですが、社会的な影響は軽微となります。しかし、毎年のインフルエンザ並に数千万人が感染する事態となれば、死者は数十万人を超えます、国家の危機です。

 こうした状況に「なるかもしれないし、ならないかもしれない可能性がある」ことが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大きな問題となります。

SARS・MERS・エボラよりは「致死率」が低い

 新型肺炎・COVID-19の致死率は「2%」と発表されています。(※WHO発表では、1/23時点で3~4%、2/17時点で2%です。)

 今回の新型コロナウイルスの引き合いとして出される、2003年に流行したSARS(サーズ)の致死率は9.6%(※2)、2012年から現在も断続的な感染拡大が続いているMERS(マーズ)の致死率は35%(※3)、また2018年再流行しているエボラ出血熱の致死率は80~90%(※4)で、これらと比較すれば「2%」という致死率は低い値と言えます。しかしこれらは比較対象になりません。

 ※なお、SARSの致死率は9.6%でしたが、死者数は世界で774名です。感染したら1割が死ぬという凶悪なウイルスの割に、全体の死者数はそれほど多くない(というと語弊があるかもしれませんが)印象をもたれるかもしれません。SARSは致死率の高さ故に、必死の封じ込めにより世界の感染者が8,096名(※2)で押さえられ、死亡者の絶対数も少なかったという状況があります。

インフルエンザと比べると「致死率」が高い

 一方、まさに今流行のピーク中である「季節性・普通のインフルエンザ」については、毎年国内で1,000万人程度が感染し、うち1万人程度が死亡していると推計されています。前述の致死率に直せば「0.1%」という数字です(※5)。この値と比較すると、新型コロナウイルスの「致死率2%」という数字は極めて大きい数字であると言えます。

 近い将来のパンデミックの「本命」として想定されていた新型インフルエンザでは、毒性の強いウイルスが発生した場合の致死率を「2.0%」と見積もっており、悪くすれば国内で2,500万人が感染し、64万人の死者が発生すると想定され、政府の行動計画や企業のBCP(事業継続計画)が策定されています。これと比較しても現状の致死率は高い数字です。

 さらに2009年に発生した新型インフルエンザパンデミックは、感染者こそ国内で2,000万人とまさに「パンデミック」状態となりましたが、幸いウイルスの毒性が低く致死率が0.001%と低かったため、国内の死者は203名に押さえられています。

 WHOがパンデミックフェーズMAXの6を宣言するなど、発生当初は終わりの始まりと恐れられましたが、フタを空けてみれば季節性のインフルエンザよりも被害は小さく済んだのです。これと比較しても、新型コロナウイルスの致死率はかなり高いと言えます。

 ※なお、現在はパンデミックフェーズが見直されたため、「フェーズ6=パンデミック」という図式は使われなくなりました。フェーズに関わりなく、「パンデミック宣言」が出されるコトになっています。

日本での「人人感染」発生により、どこまで感染者・死者が生じるかわからない

 さて、それでは目下流行拡大中の新型肺炎(COVID-19)は何が問題となるのでしょうか。このウイルスの感染力が低く、SARS並の数千名感染で流行が収まれば、死者数も数百名と絶対数の上では小さな被害で終息します。

 問題は、感染が今後どこまで広がるか分からない点です。記事執筆時点の世界の致死率数値は以下の通りです。(※日本経済新聞「コロナウイルス感染 世界マップ」より

  • 2020/01/20:感染者198名・死者3名(致死率1.52%
  • 2020/01/30感染者7,818名・死者170名(致死率2.17%
  • 2020/02/10:感染者40,554名・死者910名(致死率2.24%
  • 2020/02/20:感染者75,690名・死者2,124名(致死率2.80%
  • 2020/02/29:感染者85,412名・死者2,924名(致死率3.42%
  • 2020/03/10:感染者113,873名・死者4,012名(致死率3.52%
  • 2020/03/20:感染者234,097名・死者9,832名(致死率4.20%

 また流行初期、厚生労働省からの発表では、国内の「人人(ヒト・ヒト)」感染はまだ生じておらず、また濃厚接触がなければ感染しないので冷静に行動するようにと言われていました。

 しかし2020年1月29日に、武漢からのツアー客を乗せていた観光バスの運転手さんが、国内初の人人感染をしたと発表され(※7)、いよいよ本格的な国内感染フェーズへ移行しつつある状況になりました。その後も二次感染・三次感染者が増加し、いよいよ国内での感染者増加が見通しが立たなくなってきました(2/14現在)。

今後注目すべきニュースや報道、キーワードについて

 「人・人感染」が発生となりますと、感染が際限なく広がっていく可能性があります。ここで押さえるべきは「感染力の強さ」であり、これを図るキーワードのひとつが「飛沫核(ひまつかく)感染」と「空気感染」です。また自体の深刻さを図るためには、「患者の接触歴が追えているかどうか」を確認します。

空気感染(飛沫核感染)が生じはじめたらマズイ

 新型肺炎(COVID-19)は、現在のところ「飛沫(ひまつ)感染」をしていると報道されています。「飛沫」とは咳やくしゃみで口・鼻から飛び出した、水分とウイルスを含む粒子のことです。

 この飛沫であればドラッグストアなどで売っている「普通の高性能マスク」でもある程度ブロックすることができ、また飛距離も数メートルですので、まだ感染者が低い現状については、「濃厚接触」をしなければすぐに感染が広がることはありません。

 しかし、この飛沫が乾燥するなどして小さくなった「飛沫核」が感染を生じさせるようになると、すなわち「空気感染(飛沫核感染)」するようになると、ウイルスは屋内を何メートルもふわふわ移動することができるようになりますので、感染者は爆発的に増大します。

  • 人人間の空気感染(飛沫核感染)が確認された。
  • 会話を交わせない距離にいた同空間内で感染が発生した。

という状況がニュース報道で出はじめますと、いよいよ自体は深刻です。『新型肺炎の被害を避けるため、個人でできるコロナウイルス対策も参考いただき、できるだけ「人と接触しない」ことしか出来ることがなくなります。

患者の行動・接触歴が「全件」報道されなくなったらマズイ

 新型インフルエンザパンデミックに対する政府の行動計画では、ウイルスが国内に上陸した後のフェーズを「国内発生早期」「国内感染期」に分けています。(※8)発症者全ての接触歴を追えている状態が「早期」、感染者が増えすぎて行動を追えなくなった状態が「感染期」です。

 感染期に突入した状態では、もはや感染を押さえ込む対策よりも、死者を減らすための対策に力が注がれます。状況が深刻な場合は「緊急事態宣言」が出されて、学校の閉鎖、集会の自粛、外出の自粛といったうながしがなされます。

 現在(2/20時点)は、厚生労働省を通じて国内で発生した新型コロナウイルスによる新型肺炎患者が全員発表されており(※9)、詳細もWEBサイトで閲覧できる状態ですので、ギリギリコントロールできている状況と言えます。

 が、この発表が追いつかなくなったとしますと、感染を押さえることが出来なくなった状況と判断できますので、個々人によるサバイブ…感染防止対策が唯一有効な手段となってしまいます。

出典・参考資料

※1)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200127/k10012260561000.html

※2)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou05/06-02.html

※3)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers_qa.html

※4)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708.html

※5)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

※6)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200128/k10012261821000.html

※7)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09153.html

※8)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/jichitai20131118-02u.pdf

※9)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

※2020年・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況は日ごとに変化しています。当記事は執筆時の状況を元に作成したものですので、さらなる最新情報が出ている場合はそちらを優先してください。

当サイトの「新型肺炎・COVID-19」特集ページはこちらです。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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