ゾンビの発生・ゾンビ災害は現実にあり得るのか
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執筆者:高荷智也
人間が想像できる災害は全て現実化する可能性があり、それはゾンビ災害、ゾンビウィルス・パンデミックも例外ではありません。ゾンビウィルスに特性がよく似ている狂犬病ウィルスとの比較、またゾンビ対策を他の防災対策に活用する方法を解説します。
蘇生系ゾンビとウィルス系ゾンビ
ひとくちにゾンビと言っても様々な種類がありますが、大きく分ければ「蘇生系」と「ウィルス系」の2種類に分けられます。このうち蘇生系のゾンビはほとんどフィクションに近いものですが、ウィルス系のゾンビは、細菌兵器としてウィルスが製造されたり、あるいはゾンビそのものが生物兵器として作り出されたりする可能性がある、現実の災害予備軍です。
フィクションとしての「蘇生系ゾンビ」について
基本的にゾンビは「一度死んだ死者がよみがえり人間を襲い始める」という特徴を持っていますので、ウィルスを原因とするゾンビも広い意味では「蘇生」して発生します。ここでご紹介している「蘇生系ゾンビ」というのは、「オカルト」「超常的な力」「霊的な何か」を原因に発生をするゾンビのことを指しており、結論からいえばこれはフィクションに限定されます。
むろん、「ゾンビ」そのものがフィクションだとしてしまえば、蘇生系もウィルス系もなにもあったものではありませんが、ウィルス系ゾンビは科学的な説明ができるのに対して、蘇生系ゾンビはそういった説明ができません。例えば生前の怨念が積もって現世に舞い戻ったとか、冥界の扉が開かれてゾンビが大量にわき始めたとか、そういった説明になるのです。
またウィルス系のゾンビは基本的に頭部(脳)を破壊すれば行動を止めることができますが、蘇生系のゾンビは頭を吹き飛ばそうと、爆弾で四散させようと、「なにか不思議な力」が働いて行動が止まらなかったり、爆発した肉片のような物やチリがあつまって復活をしたりということも(映画などでは)ありますので、人間が対処できる代物ではないのです。
現実的にあり得るかもしれない「ウィルス系ゾンビ」について
一方、ウィルスなどを原因とするゾンビについては、その発生メカニズムがある程度科学的に説明できることに加えて、後述する狂犬病ウィルスなど、ゾンビウィルスに似通ったものが現実に存在していることから、実際にあり得るかもしれない災害のひとつとして捉えるべき事象であると考えられます。
ウィルス系ゾンビが発生する可能性としては、自然界で狂犬病ウィルスが変異をするという事態の他、例えば軍事目的による細菌兵器の研究によりゾンビウィルス(のようなもの)が人工的に作り出されたり、あるいは同じく軍事目的による生物兵器の研究により、最初からゾンビ(のようなもの)が作り出されたりする可能性が考えられます。
ゾンビ症状に似通っている「狂犬病」ウィルスという存在
ゾンビウィルスは体液の接触で感染をおこし、強い感染力と100%の致死率を持ち、感染者を凶暴化させる特徴を持っていますが、これは実在する「狂犬病ウィルス」の特性に似通っています。仮に狂犬病ウィルスが、鳥インフルエンザのように突然変異をおこし、人-人感染を起こすようになれば、ゾンビウィルス・パンデミックと同じ状況にならないとも限りません。
狂犬病(狂犬病ウィルス)とはどのようなものか
ゾンビ発生の原因と考えられている「ゾンビウィルス」は、強い感染力、100%の致死率(ゾンビ化率)、体液の接触による感染、感染すると凶暴化する、というような特徴を持っていますが、これは実在する「狂犬病ウィルス」の特性に似通っています。狂犬病もゾンビウィルス同様感染後の治療方法は存在せず、致死率も100%ときわめて恐ろしい感染症です。
かつては日本でも狂犬病が猛威を振るっており、「狂犬病予防法」が制定される1950年(昭和25年)以前には、毎年多くの犬および人が狂犬病に感染して死亡していました。しかし、その後ペット犬へのワクチン接種の義務化と野犬の駆除が徹底されるようになり、1956年(昭和31年)以降は人への感染がなくなり、国内から狂犬病は撲滅されたということになっています。
しかし、海外ではいまだ狂犬病が猛威を振るっており、日本の周辺国を含むアジア・アフリカ地域を中心に、毎年5万人以上が狂犬病の犠牲となっています。また海外へ渡航した日本人が現地で狂犬病に感染するケースも存在し、そうした感染者、あるいは海外から持ち込まれる動物から再度国内に狂犬病ウィルスの感染が広まらないという保証はないのです。
狂犬病ウィルスがゾンビウィルスに変異をするという可能性
狂犬病ウィルスは、狂犬病にかかった動物(犬が多いですが、あらゆるほ乳類に感染の可能性があります)にかまれて、唾液に含まれるウィルスが人間の体内に侵入することで感染をします。基本的に動物から人間への感染が唯一のルートとなっており、現在の所人間から人間に感染をすることはないため、感染者から狂犬病ウィルスが拡大することはありません。
しかし人への感染を繰り返すうちに、例えば鳥インフルエンザウィルスのように突然変異をおこし、人間から人間への感染を起こすようにならないとは限りません。また変異の過程で毒性が下がり、致死率が低下する一方、狂犬病の特徴である「興奮性」「精神錯乱」といった症状がそのまま維持されれば、これはまるで「ゾンビ状態」と考えられます。
さらに、狂犬病に感染すると身体が次第にマヒ状態におかされるため動きが制限されてきますが、これも身体能力が低下する・手先の動きが鈍くなる・歩行速度が落ちるといったゾンビ特有の動きに似通っており、狂犬病ウィルスとゾンビウィルスの共通性のひとつとして考えられます(むろんこれは防災的な考察であり、狂犬病患者を侮辱する行為ではありません)。
ゾンビ対策は既存の防災対策にもつながる準備
ゾンビ対策の一環として行う長期備蓄・籠城生活への備えは、首都直下地震や南海トラフ沖大地震、強毒性の鳥インフルエンザパンデミックや、天体衝突・破局的噴火・核戦争による日照障害が引き起こす社会機能の停滞への備えと同じものです。ゾンビ対策を進めることで、既存の災害への備えを行うことができますので、新たな防災対策の一環としてゾンビ対策を行ってもよいでしょう。
感染症対策としてのゾンビウィルスの予防
致死率100%をほこるゾンビウィルスの被害を避けるためには、まず第一に感染をしないことが重要になりますので、人混みを避けて自宅に籠城をしたり、人口密度が低い地域へ避難をしたりといった行動が必要になります。またウィルスとの接触を避けるために、外出時にはマスク・ゴーグル・手袋・レインコートなどを装着すということも短期的には有効です。
こうした対応は、強毒性の新型インフルエンザ・パンデミックへの備えと等しいため、計画や対策用のグッズをゾンビ発生時にも流用することができます。新型インフルエンザ対策をきちんと行っておくことができれば、それは部分的に対ゾンビ用の備えとして活用することができますし、逆に言えばゾンビ対策を一般的な感染症対策として活用することもできるのです。
社会的混乱への対策としてのゾンビサバイバル・長期備蓄
ゾンビそのもの、あるいはゾンビウィルスを避けるために自宅などへ籠城をする際には、電気・ガス・水道などのライフラインが停止することに備えた事前の準備を実施します。例えば水・食料・トイレといった生活必需品を備蓄しておくほか、医薬品や日用品を準備したり、娯楽を用意したり、外部との連絡手段や情報収集のための機材を準備するといった内容です。
ゾンビの身体能力や知能が低く、早期に警察や自衛隊に鎮圧される場合には、数日から1週間程度の間外出を控えればゾンビ災害をやり過ごすことができます。ちょうど、首都直下地震や南海トラフ沖地震などの巨大地震への備えとして1週間程度の自活が求められていますが、そのための準備を「低レベルゾンビ対策」として活用することができます。
一方、ゾンビが疾走したり武器・道具を用いたりするタイプであると、最悪の場合は国家や文明存亡の危機を迎える可能性があります。このような状況に対しては、数ヶ月単位で籠城をする必要がありますが、これも強毒性の新型インフルエンザ・パンデミックが発生したり、破局的噴火・核戦争・隕石の衝突などの影響で気候変動が生じ、全世界的な食糧危機を向かえるための備蓄・備えをそのまま流用することができるのです。
ゾンビウィルス・パンデミックへの備えが無駄になることはない
上記のことから、ゾンビ災害への備えは大規模な災害に対応するための準備として有効に活用できるということが分かります。防災対策や防災備蓄を始めるきっかけは人それぞれですが、そのひとつが「ゾンビ対策」であって悪い道理はありません。ぜひゾンビ対策に取り組み、家庭の防災対策そのものの底上げに挑戦してください。