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強風・暴風による災害に関する警報と被害の程度

最終更新日:

執筆者:高荷智也

台風や低気圧によって大雨と共にもたらされる風害は、最大級のものになると大地震に匹敵する被害をもたらします。しかし大地震と異なり事前に発生する日時や場所を知ることができるため、気象警報などを聞き流さず関心を持つことが重要です。

強風に関する警報の種類

 多くの場合は「強風被害」は「大雨被害」と同時に発生します。台風や発達した低気圧によって雨風がもたらされますので、通常は「大雨・暴風・高潮・波浪」などの注意報や警報がセットで発表されます。なお冬場の低気圧が暴風をもたらす場合、雪を伴う場合は、「風雪注意報」や「暴風雪警報」が発表されることになります。

暴風特別警報

 強風に関する警報で最も強く危険を知らせている警報が「暴風特別警報」です。気象庁の定義では『数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により“暴風”が吹くと予想される場合』に発表とされています。「数十年にいちどの強度の台風」というのは、「伊勢湾台風級(1959年・死者行方不明者5,098名)」を指し、「中心気圧930hPa以下又は最大風速50m/s以上」の台風や同程度の温帯低気圧が来週する際に、特別警報を発表することになっています。(※沖縄地方、奄美地方及び小笠原諸島については、中心気圧910hPa以下又は最大風速60m/s以上。)

『参考:気象等の特別警報の指標(気象庁)』

暴風警報

 暴風で「重大な災害が起こるおそれ」のあるときに発表されます。(冬場で雪を伴う場合は「暴風雪警報」になります。)基準としては陸上の場合おおむね「20m/s」程度ですが地域によって基準が異なり、例えば沖縄県那覇市の場合は「25m/s」、東京都中央区も同様に「25m/s」、私が住む静岡県三島市だと「20m/s」となっています。

強風注意報

 強風で「災害が起こるおそれ」のあるときに発表されます。(冬場で雪を伴う場合は「風雪注意報」になります。)暴風警報同様地域により発表基準が異なり、例えば沖縄県那覇市の場合は「15m/s」、東京都中央区の場合は「13m/s」、私が住む静岡県三島市だと「12m/s」という具合です。

風速と被害の程度について

 おおむね、風速が「10m/s」を超えると強風注意報が、「20m/s」を超えると暴風警報が、そして「40m/s(これは伊勢湾台風の風速)」を超えると特別警報が発表されるイメージとなります。が、10m/s、20m/s、40m/sと言われてもなんとなくピンと来ませんよね。どのくらいの風速で、どんな状況になるのかをまとめました。

 ※ちなみに「最大風速」の歴代ナンバーワンは、1942年に富士山頂で観測された「72.5m/s」、第2位は1965年に「昭和40年台風第23号」の影響で観測された高知県室戸岬の「69.8m/s」です。後述しますがぺんぺん草程度しか残らない地獄のような風です。

「やや強い風」平均風速「10m/s~14m/s」…時速50キロ程度

 「強風注意報」が発表されはじめる強さの風です。基準としては最も弱いランクですが、それでも傘をさすのが難しくなってきたり(アサガオが量産される状況です)、自動車が横風を感じるようになったりする強さの強風です。登山シーズンの富士山頂で日常的に吹いている風速に近く、風上に対してまっすぐ歩くのは難しくなる強さの風です。

「強い風」平均風速「15m/s~19m/s」…時速70キロ程度

 台風となる風速です。平均風速の最大値が「17m/s」以上の低気圧が「台風」と定義されますので、「強い風」という報道が出はじめたらそれは「台風クラス」ということになります。風上へ向かって歩くのが困難になり、子供や高齢者が転倒をしたり(大人だって傘なんかを差しているとひっくり返りそうになる風速ですし)、止め方の甘い屋根材などが剥がされはじめる強さの風です。

「非常に強い風」平均風速「20m/s~29m/s」…時速100キロ程度

 「暴風警報」が発表されはじめる強さの風です。「高速道路を走行している車両の窓から手を出したときに感じる風」というとイメージができるでしょうか。風上に向かって歩くことはおろか、何かに捕まっていないと吹き飛ばされる恐れがある風で、樹木、看板、プレハブ小屋、ビニールハウスなどに被害が生じはじめる強さの風です。

 日常生活への影響で言えば、「風速20m/s」を超えるとJRなどが徐行運転を開始し、「25m/s」を超えると運転中止になります。自動車の運転も困難になり始める風速ですので「注意」が必要になる「災害発生一歩手前」の風速と言えます。事前準備としては「屋外の物を片付ける」、発生中の対応としては「雨戸やカーテンを閉め、外出はしない」という状況です。

「猛烈な風」平均風速「30m/s以上」…時速120キロ以上

 気象庁の定義では風速「30m/s」以上がひとくくりになっているのですが、「風速30m/s」では、何かにつかまっていないと立っていることができず、細い木が倒れはじめたり、カーポートの屋根が変形をはじめたりする強さの暴風です。(※「プロ野球選手の球速並」と表現されることもありますが、野球をやらない私にはピンと来ません。きっとスゴイのでしょうね。)

 「風速40m/s」は「暴風特別警報」が発表されるクラスの強風です。(※暴風特別警報が発表される基準のひとつとなっている「伊勢湾台風」が上陸した愛知県伊良湖岬の風速が「45m/s」、甚大な被害を出した名古屋の風速が「37m/s」でした。)走行中のトラックが横転したり、道路標識が傾いたり、住宅の屋根が本格的に崩壊をはじめる強さの風です。屋外で行動することは命の危険を伴うため、この風に遭遇する前に、コンクリートや鉄骨造りの安全な建物の中に避難しなければなりません。

 「風速50m/s」は日本のの陸上ではメッタに観測されない超強風です。多くの樹木が根こそぎぶっ倒れ、電柱や街灯、自動販売機や電話ボックス(なんて最近めっきり見かけなくなりましたが…)が転倒し、ブロック塀や老朽化した木造住宅が倒壊し始める状況になります。この状況、「大地震」による市街地の被害と等しい状況というわけです。ニュースや天気予報で「風速50m/sの猛烈な台風が…」などと見聞きした場合は、大地震が予知されたのと同じような事前準備が必要になることが分かります。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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