北朝鮮で地下水爆実験、放射性降下物(死の灰)対策は必要か?
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執筆者:高荷智也
核実験による日本への影響(放射能汚染)は?
本日1月6日に北朝鮮が実施した地下核実験(水爆実験)で生成された放射性降下物(死の灰)が引き起こす、日本への放射能汚染の影響は、「まだなんとも言えない」状況です(1月6日の15時現在では、全国のモニタリングポストに異常はありません)。
周辺が放射能汚染されるかどうかは、具体的な爆発の規模や位置が明らかにならなければ分かりませんので、現時点では起こるかもしれないし、起こらないかもしれないと言わざるを得ません。
SPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測結果が公表されています。今回の実験では放射能の放出はないと考えられていますので、あくまでも「万が一」のシミュレーション結果です。解説記事を作成しましたのであわせてご覧ください。
放射能汚染の影響を確認する方法
実際に日本国内で被害が生じるかどうかは、次の2点の方法で確認します。
現地の風向きをチェック
放射性降下物は、爆発地点の風下に落下してきます。ですから北朝鮮の風下が現在どこにあたるのかを確認する必要があります。ちなみに1月6日の朝時点ですと、東北地方がバッチリ風下です。
- リアルタイムな国内の風向き
気象庁:ウィンドプロファイラ(上空の風) - アジア全域の風向き
気象庁:高層天気図
国内の空間放射線量をチェック
万が一、放射性降下物(死の灰)による放射能汚染が生じれば、空間放射線量の増加という反応が生じます。福島第一原発事故当時と同じ作業になりますが、リアルタイムの放射線量を確認して、数値が跳ね上がっていないかを確認するとよいでしょう。
※記事執筆時点では特に異変はありません。福島第一原発周辺はむろん高い線量ですが、これは核実験とは無関係ですので。
2016年1月6日10時半頃、北朝鮮で核実験の恐れ?
正月気分を吹き飛ばす報道が、気象庁からされています。
北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について(第2報)
平成28年1月6日10時30分頃に発生した北朝鮮付近を震源とする地震(マグニチュード(M)5.1)について、(中略)今回の地震が自然地震ではない可能性があります。
またこのニュースが出た後に、北朝鮮の国営テレビから、核実験を行った声明が発表されていますので、恐らく事実ではないでしょうか。
北朝鮮 水爆の実験実施を発表
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、現地時間の正午、日本時間の午後0時半から「特別重大報道」として臨時ニュースを伝え、日本時間の6日午前10時半、北東部で初めての水爆の実験を行ったと発表しました。北朝鮮が核実験を実施したのは、2013年2月以来およそ3年ぶり、4回目ですが、水爆の実験を行ったと明らかにしたのは初めてです。
また初めての水爆実験ということで、これまでよりも高威力・規模の大きい実験が実施された可能性もあります。
放射性降下物の可能性は?
今回の実験が、極東アジアの政治経済にどのような影響を及ぼすのはその道の専門家の方にお任せするとして、当サイトでは「防災対策」に関する開設をいたします。今回個人や家庭レベルで考えるべき防災は「放射性降下物(フォールアウト・死の灰)」の問題です。
核実験が行われると、環境中にはどのような影響が生じるか?
核実験が実施されると、核分裂・核融合反応により放射性物質(放射能)が生成されます。この放射性物質を含んだチリが、放射性降下物(フォールアウト・通称死の灰)として環境中にばらまかれた場合、広域の放射能汚染をもたらす可能性があります。
今回の地下核実験で、放射能汚染は生じるのか
日本では、1954年3月1日にアメリカがビキニ環礁で実施した水爆実験により引き起こされた「第五福竜丸事件」が有名ですが、核実験を地上で行った場合は広範囲に放射性降下物(死の灰)がばらまかれて放射能汚染がなされます。
しかし現在では地上への環境を考慮して核実験は地下で行われるようになっており、基本的に大規模な放射能汚染はなくなった、ことになっています。しかし微量な放射性物質が地上や海を汚染しているというデータを発表する団体もあるため、この辺りの真意はなんとも言えない状況です。
日本への影響はあるのか?また何をすればよいか?
気象庁の最新の高層天気図を見ると、風向きはバッチリ北朝鮮側から日本方向です。もし、今回の実験で放射性物質が環境中にばらまかれていた場合は、日本にも到達する「可能性」があります。
こういった自体が生じるかどうかはまだ分かりませんが、どうしても気になる方については次のような対策を講じてください。基本的には福島第一原発事故当時と同じ対応です。(※恐らくここまでは不要ですが、気になる場合はご参考に。)
- 今日・明日の外出はできるだけ控える(特に子供)。
- 今日・明日は洗濯物を干さない。
- 外出する場合はマスク着用、できればレインコートやウィンドブレーカーも着て、室内に入る前にホコリを落とす(完璧を期すならコンビニのレインコートを使い捨てにする)。
- 自宅は全て戸締まり、換気扇なども止めて外気を侵入させないように。
重要なことは、体内に放射性物質を取り込まないということです。対外に付着した放射性物質はシャワーを浴びれば落とせますが、体内に入ってしまうと、種類によっては体外に排出されず、体内から放射線を出し続ける体内被ばくを起こしてしまうからです。
現在の空間放射線量について
こちらのサイトなどで全国の放射線量がチェックできますが、記事執筆時点(1/6 13時半)ではまだ影響は見られません。福島第一原発事故が生じたころに、個人で放射線測定器(ガイガーカウンター)を購入した方もいると思いますが、念のため起動させておいてもよいでしょう。
SPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測結果が公表されています。今回の実験では放射能の放出はないと考えられていますので、あくまでも「万が一」のシミュレーション結果です。解説記事を作成しましたのであわせてご覧ください。
その他の関連情報
「原爆実験」と「水爆実験」は何が違うのか?
ひと言でいえば威力が違います。水爆の方がはるかに高威力で、また生成される放射性物質(死の灰)の量も増えます。
また原爆は「核分裂反応」、水爆は「核融合反応」でエネルギーを作り出しているのですが、本来核融合反応ではほとんど「死の灰」は生成されません。しかし、多くの水爆は、水素(厳密には重水素やトリチウム)の核融合反応を起こすための起爆剤として、複数の「原爆」を用いているため、本来無害な核融合爆弾が、起爆用の原爆により大量の「死の灰」を生成してしまうのです。