避難場所(指定緊急避難場所)と避難所(指定避難所)の違い
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執筆者:高荷智也
災害発生時に避難先として移動する場所には、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の2種類があります。大津波や大規模火災などから命を守るために逃げ込むのが避難場所、命が助かった後に生活をするために避難するのが避難所です。
命を守る「避難場所」と生活をする「避難所」
いわゆる「避難所」には性質の異なる2つの種類の場所があることをご存じでしょうか。津波・洪水・土砂災害など、「その場に留まっていては死ぬかもしれない災害」から命を守るために逃げ込む場所が、「避難場所(指定緊急避難場所)」。命を守った後に、一時的な生活をする場となるのが「避難所(指定避難所)」です。
命を守るために逃げ込む「避難場所(指定緊急避難場所)」
「その場に留まると死ぬかもしれない」災害から命を守るため、緊急的に避難する施設または場所が、「避難場所」です。避難場所は、災害の種類毎に場所が異なります。大地震であれば津波を避ける高い場所や火災を避ける広い場所、台風や大雨であれば浸水や土砂災害を避ける、河川や土砂災害発生地域から離れた場所などになります。あらかじめハザードマップなどを確認し、自宅や学校・職場の最寄りにある「避難場所」と移動ルートを必ず確認しておいてください。
指定緊急避難場所は、災害対策基本法という法律によって名称や設置場所の条件が定められています。この法律は2013年(平成25年)に改定され、そのときに「指定緊急避難場所」という名称が正式に定められました。改定前の避難場所の呼び名は自治体によってまちまちで、一時避難地・緊急避難施設・広域避難場所などの名称で呼ばれていました。改定前の地図や看板には、こうした名称が用いられています。
緊急避難後に一時滞在する場所が「避難所」
「その場に留まると死ぬかもしれない」状況を回避して、全体的な危険がなくなるまで一定期間滞在する場所。または自宅などへ戻れなくなった場合、一時的に身を寄せる場所が「避難所(指定避難所)」です。避難所も災害対策基本法という法律によってその概要が定められており、指定をするのは市町村です。2013年の改訂前は、生活避難所・収容避難所・二次避難場所などの呼び名がありました。やはり古い地図や看板を見る際には注意が必要です。
また災害発生時、実際に避難所を運営するのは行政ではなく、避難所を利用する住民達自身になります。そもそも行政職員も被災者となりますし、数名の職員で数十名~数百名が生活する避難所を運営することは不可能です。避難所はホテルではなく共同生活の場、自分自身が運営に参加するという意識が必要になります 。
避難場所と避難所について
「避難場所」と「避難所」の場所は、異なる場合も同一の場合もある
避難場所と避難所は異なる場所が指定されていることもあれば、同一の施設が指定されていることもあります。海岸沿いにある「津波避難タワー」などは単体で指定される避難場所の典型ですが、生活をする施設ではありませんので、津波が収まった後は別の避難所へ移動する必要があります。一方、周囲に海も川も山もない安全な土地にある学校は、そのまま「避難場所」件「避難所」として指定されることになります。
「避難場所」と「避難所」が区別された経緯
2011年(平成23年)3つ11日に発生した東日本大震災(厳密には「東北地方太平洋沖地震」によって引き起こされた被害)の時点では、避難場所と避難所の区別は必ずしも明確ではありませんでした。さらに避難場所も災害の種類毎に区分されておらず、ひとくくりになっていました。
このため、「地震が起きたら○○小学校へ逃げる!」という意識がすり込まれることになり、津波にのまれる場所にある避難所へ逃げ込み命を落とすといった被害が発生してしまいました。こうした教訓・反省を生かし、「走って逃げる際には避難場所」「生活をする場所は避難所」という区別をするために、指定緊急避難場所と指定避難所の違いや定義が明確になったのです。