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避難場所(指定緊急避難場所)について

最終更新日:

執筆者:高荷智也

避難場所として指定される場所

 指定緊急避難場所は、災害時に誰もがスムーズに入れる場所であり、かつ地震・台風・噴火などの災害毎に安全な場所が、市町村によって指定されることになっています。

避難場所の条件1:災害時は誰でもすぐに入れて、スムーズに移動できる

 どのような場所でも指定緊急避難場所として指定されるかと言えば、もちろんそんなことはありません。避難場所に共通する条件としては、「災害時には誰でもすぐ入れる」場所であり、かつ「たとえ大地震が生じたとしてもスムーズに避難できる経路が確保されている」ことが条件になっています。

避難場所の条件2:災害特性ごとに安全な場所であることが確認済

 さらに避難場所は、災害の種類毎に異なる場所が指定されています。洪水や内水氾濫、また津波や高潮による浸水害に対する避難場所であれば「水没しない場所」になりますし、土砂災害(崖崩れ・地すべり・土石流)に対する避難場所であれば「崩れない場所」が。また大地震などで生じる大規模火災に対してであれば、「燃える物がない広い場所(輻射熱などを防ぐためですね)」が指定されますし、噴火に対する避難場所であれば、火砕流・溶岩流・噴石などの影響が及ばない場所に指定されます。

自宅や学校・職場で生じる災害種類ごとに、避難場所を確認しておく

 そのため、津波の際に逃げ込んだ避難場所が土砂災害に対しては弱かったり、火災を避けるための避難場所は洪水発生時にはNGとなったりする場合があります。自宅や学校・職場周辺のハザードマップを確認して、「何が起きたら」「どこへ逃げるのか」を明らかにしておく必要があるのです。

避難場所に準備されている設備や備蓄品について

 指定緊急避難場所の立地条件や耐震条件については法律の定めがありますが、避難場所内部の環境や備蓄品に関する定めはありません。そのため「避難場所」単体で指定されている場合、屋根のない雨ざらしの広場でかつ備蓄品もない、という場所もお送りあります。あくまでも命を守るため、一時的に逃げ込む場所という位置づけということですね。

「避難場所」と「避難所」が同一施設である場合

 「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は同一施設が指定される場合もあります。避難所については、応急的に必要と考えられる水・食料を備蓄しておくか、すぐに供給できる計画を立てることが求められていますので、少なくとも雨をしのげる屋根と、最低限の備蓄品供給を受けられる可能性があります。

 しかし、そもそも避難場所の収容施設は全国民を対象とはしておらず、備蓄品の量についても潤沢なものではありません。また法律で義務づけられていても実際に、適切な調達・管理がなされているかどうかは別問題ですので、避難場所へ逃げ込んだ物の、トイレ・水・食料などの供給を潤沢に受けられる可能性は高くありません。また最低限必要な道具以外の備蓄は基本的にありませんので、最低限の防災グッズは自分で持ち込む必要があります。

 雨や雪が降っていれば雨具や着替え、冬季であれば防寒着、夜間であればLEDライト、応急手当用品など、安全に移動をするための道具は特に重要です。また携帯トイレ・水・食料なども必要ですが、量を増やしすぎると荷物が重くなり避難が遅れるため、「リュックに入れて背負った際に走って移動できる重さ」程度にしておきます。

指定緊急避難所を定める法律(災害対策基本法)について

 「指定緊急避難場所」は、2013年(平成25年)6月に、「災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成 25 年法律第 54 号)」が公布され、翌年2014年(平成26年)4月1日から、市町村長による指定緊急避難場所の指定制度が施行されることで、名称や指定条件などが統一されるようになりました。

指定緊急避難場所について

(指定緊急避難場所の指定) 第四十九条の四 市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質その他の状況を総的に勘案し、必要があると認めるときは、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における円滑かつ迅速な避難のための立退きの確保を図るため、政令で定める基準に適合する施設又は場所を、洪水、津波その他の政令で定める異常な現象の種類ごとに、指定緊急避難場所として指定しなければならない。

出典:災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)」

避難場所が対象としている「異常な現象」について

 この、避難場所を設置する際の安全条件に必要な「異常な現象の種類」についても法律で指定がされています。

(政令で定める異常な現象の種類) 第二十条の四 法第四十九条の四第一項の政令で定める異常な現象の種類は、次に掲げるものとする。 一 洪水 二 崖崩れ、土石流及び地滑り 三 高潮 四 地震 五 津波 六 大規模な火事 七 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める異常な現象の種類

出典:災害対策基本法施行令(昭和三十七年政令第二百八十八号)

(令第二十条の四の内閣府令で定める異常な現象の種類) 第一条の六 令第二十条の四の内閣府令で定める異常な現象の種類は、一時的に大量の降雨が生じた場合において下水道その他の排水施設又は河川その他の公共の水域に当該雨水を排水できないことによる浸水及び火砕流、溶岩流、噴石その他噴火に伴い発生する火山現象とする。

出典:災害対策基本法施行規則(昭和三十七年総理府令第五十二号)

想定外の災害時には、結局自分自身で安全な場所を探すしかない

 上記によると、避難場所を指定する際には、大地震、大規模火災、火山の噴火、津波・高潮・洪水・内水氾濫、土砂災害に対しては安全性を確認することが求められています。そのためその他の事態、竜巻、大雪、原発事故、ミサイル攻撃などは想定外ということになりますので、市町村が独自に避難場所を定めていなければ、こうした災害時の避難場所は自分たちで考えておく必要があります。

 またゾンビウイルスパンデミックや、ゴジラ(巨大不明生物)の上陸といった状況に対しても、どの避難場所が安全かという定義がなされていないため、自分達で安全な場所を探さなければなりません。行政が出す避難に関する指示は、あくまでも想定の範囲内に対する災害時にのみ有効であるため、誰も経験をしたことがない状況で自分と家族の命をまもるのは、最終的には自分自身であるという認識が重要なのです。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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