対象期間別、食料備蓄の内容
最終更新日:
執筆者:高荷智也
食料備蓄=カンパンではありません。食料備蓄は利用の期間にあわせていくつかに分類されます。餓死回避から、健康維持・ストレス軽減目的の備蓄まで、各種ご案内します。
何を想定した食料備蓄か?
食料品の備蓄は、食料を消費する期間によって大きく4つのタイプに分割され、それぞれの分類ごとに備えるべき食料品の内容が大きく異なります。数日を対象とした備蓄と、1年を見据えた備蓄を、同じ方法で行うわけにはいきません。
2~3日…避難時の非常食
地震で自宅が倒壊。津波からすぐに逃げる。噴火から避難する。など、迅速な避難を行う際の食糧で、いわゆる非常食を備えます。食事と言うよりは、カロリー補給に近い概念となります。
1週間…救援・復旧までのツナギ
地震や水害の際、避難所や自宅において、政府の救援や流通網の回復を待つ間に食いつなぐための食糧です。調理が望めない可能性があるため、簡単に食べられるものが中心となります。
数週間…自宅への短期籠城生活
新型インフルエンザ、原子力発電所事故や核兵器による核汚染、大規模噴火の降灰など、一時的に自宅へ引きこもる必要がある際の食糧です。普段の食事に近い食べ物を備えます。
数ヶ月~数年…飢餓と餓死の回避
戦争やハイパーインフレなどによる食糧危機、核の冬や隕石落下による作物の死滅など、当面食糧の入手ができない場合への備えです。サプリメントによる栄養管理などが必須です。
「非常食」は、運動するためのカロリー補給食品
緊急避難時に必要な、非常持ち出し袋に入れるための「非常食」を用意しておきます。必要なのは「食事」ではなく、効率的にエネルギーの補給を行える「カロリー補給」のための食品です。また持って移動するため、軽く、かさばらず、すぐに食べられるものが必要です。
例えば非常食に「主食」は不要です。というより、緊急時にいちいち「主食」「副食」「汁物」を用意し、これをよく噛んで三角食べしましょう。など悠長なことを考えてはいられません。避難に必要なエネルギーを補充するための、運動するための栄養補給を行います。
また非常食が必要となる事態においては、落ち着いた場所で食事がとれるとは限りません。移動しながら、逃げながら、泳ぎながら、栄養を補給する必要があるかもしれません。基本的に調理が不要で、そのまま食べることができるものが適しています。調理やお湯が必要といった食品は、適しません。
人間数日間程度であれば、飲まず食わずでも死ぬことはありません。が、迅速な避難と、その後の生活再建を速やかに行うためには、健全な肉体と精神が必要となります。それらを維持するための食品が、非常食に求められる役割だと考えればよいでしょう。
■数日間の非常食、備蓄例
- カロリーメイトなど栄養補助食品(非常食の王様です)
- ウイダーインなどのゼリー飲料(水分補給もでき効率的)
- カンパン(非常食としての乾パンは優秀です)
- チョコレートやアメ(高カロリーな菓子は非常食向けです)
- 水分(清涼飲料水があれば発汗時に効果的です)
- 携帯トイレ(食べれば出ます、非常食と同量のトイレが必須)
「避難所生活」には「手軽・おいしい・簡単」な食事を
地震や水害時に、避難所や自宅において、公共の救援を待ったり、都市のインフラや流通網が回復するのを待つ際に必要となるのが、1週間程度の食糧備蓄です。1週間ほどしのげば何とかなる、という前提のもと、この期間を健康に乗り切れるだけの食料品を用意します。
避難生活ではストレスが貯まります。そのため食事には、栄養補給だけでなく娯楽的(遊ぶというより「食べる」という楽しみ)な要素が求められます。そのため、自分が好きな食べ物や食べておいしい物などを、多めに揃えておくとよいでしょう。
ただ、例えば電気・ガス・水道などのインフラや、調理器具などは手に入らない可能性が高く、調理や後片付けにそれほどの手間はかけられません。「お湯を注ぐだけ」「ひもを引っ張るだけ」「かき混ぜるだけ」など、~だけという食品が適しています。
量はそれなりですので、「手軽・おいしい・簡単」な食料品を揃えても、高額な費用は発生しません。カンパンばかり買いそろえ、「避難所でこんなのばかり食べたくない」という事態を招かない様、試食の上で「普段でも食べたくなる」ものを買いそろえましょう。
いわゆる「食料備蓄」は、多くの場合この規模の備えを指していることが多く、ホームセンターやスーパーの防災コーナーなどに売られているのは、このように1週間程度を対象とした備蓄食料品です。手に入りやすいので色々食べてみると安心です。
■1週間の備蓄食料、備蓄例
- アルファ米ご飯(お湯を入れるだけで食べられます)
- フリーズドライ食品(これもお湯を注ぐだけです)
- 加熱キット付きレトルト食品(温かい食事は有効です)
- 缶詰類(パンの缶詰・おでん缶など、単体で完結するもの)
- 水(調理用というより、飲料水です)
- トイレ(避難生活には、食料と同量の携帯トイレが必須)
数週間の籠城生活には、普段の食事を延長させて対応
避難所生活と異なり、無傷な自宅に数週間籠城する際に必要となる食料備蓄です。致死率が高い新型インフルエンザや、他の感染症の流行ピークを避けるための籠城。核兵器や原子力発電所の事故で、一時的に放射能(放射性物質)を避けるための籠城などが該当します。
数週間程度の期間の籠城であれば、極端な話水だけでも飲むことができれば死ぬことはありません。が、この規模の災害が発生した場合、籠城後が終わった後すぐに食料品が手に入る保証がないため、健全な肉体と精神を保てるだけの食品は、手元に確保しておくべきです。
数週間を対象とした食料備蓄は、日常の延長だけで、ある程度対応可能です。例えば、毎週食品を買いだめしている家庭であれば、家中の食べ物をかき集めるだけで1~2週間程は食いつなげるはずです。普段の買い物を少し多くするだけでも、数週間分の備蓄は行えます。
また、インフラの稼働は分かりませんが、住空間は確保されていますので、一緒に水やカセットコンロを用意しておければ、ほぼ通常通りの調理も可能です。すこし日持ちのする食品を、常に手元に確保する形にして、それを食料備蓄の代わりとしてもよいでしょう。
■数週間の備蓄食料、備蓄例
- 米・乾麺・パスタなど主食類(買い置きを増やすだけで可)
- 冷蔵庫には適度な買い置きを(これだけで結構持ちます)
- 冷凍食品(肉や魚があると食事のバリエーションが広く)
- レトルト食品・缶詰など(冷凍食品があれば少量で可)
- 乾燥食品(干し椎茸、乾燥わかめなど)
- 粉スープ、カレールーなど(これも買い置き増量で対応)
数ヶ月以上の食料備蓄には、計画性が必要
数ヶ月以上の食料備蓄は「餓死」を防ぐことを目的にする点で、他の食料備蓄と決定的に異なります。食料を備蓄しておかなければ死ぬ様な事態というのは、そうそう訪れる物ではありませんし、これに対する備蓄も結構な規模となるため、事前の計画が必要となります。
日本の場合、海外からの食料輸入が停止すれば、とたんに食料危機が訪れます。ハイパーインフレによる購買力低下、テロや戦争によるシーレーンの喪失。また核戦争による核の冬や、隕石落下による食料生産そのものの停止など、輸入が止まる原因は様々に存在します。す。
このような災害に対しては、数ヶ月~数年単位での食料備蓄が必要となりますが、無計画に行えばすぐに破綻します。対象とする期間を延ばすほど、保管場所・購入コスト・運用の手間などが膨大となるためです。短い期間から徐々に伸ばしていくのも、方法の一つです。
内容としては「消費期限」が長く、「コスト」が安く、「体積」が小さな食品が中心です。また、水や燃料(カセットガスボンベ)など、調理のための方法も合わせて備蓄する必要があります。普段の食生活に、長期備蓄の一部を組み込めれば付加の低減につながります。
■数ヶ月~数年の備蓄食料、備蓄例
- 米・乾麺・パスタなど主食類(乾燥状態のものを沢山)
- レトルト食品・缶詰・瓶詰めなど(主食ではなく副食を)
- 菓子類・嗜好品など(お酒があってもよいです)
- 調味料(無くなると悲惨です)
- サプリメント(生鮮食品が不足するので必須です)
- 水(量がいるので安いミネラルウォーターなど)
- 燃料・調理器具(カセットコンロ+ガスボンベ)