水の備蓄量と種類
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執筆者:高荷智也
水の備蓄量といえば、「3リットル×3日分=9リットル」という定義をよく目にします。この量は正しいのか、また備える水は1種類でよいのか、考えてみましょう。
どんな水をどのくらい備蓄するか?
例えば前述の「3リットル×3日分=9リットル」、これはあくまでも地震災害を前提とした備蓄すべき水の量であり、その他の危機・災害においてはまた異なった分量の水を用意する必要が出てきます。
また、用意した水の全てが飲める水、飲料水である必要はありません。生活用水として用意すべき水は、飲めるほどではなくても汚れていなければ、目的としては十分である場合も多くあります。
備蓄すべき水の種類は、おおむね次の様になります。
1)飲料用
2)食事用
3)衛生・風呂用
4)トイレ用
それぞれについて、細かく見てみましょう。
飲料用
人間は、1日あたり2~3リットルの水を体外に排出します。尿や汗の様に目に見える形で出される量が半分強ほどで、残りが呼吸や皮膚を通じ、目に見えない形で排出されています。
一方、外から体の中に水を取り入れる方法は2種類、液体を飲んで摂取する方法と、食物を通じて摂取する方法に分かれます。分量としては飲む方がやや多く、1日辺り1.5~2リットルの飲料水が必要となります。
また飲料水は、お茶、野菜ジュース、スポーツ飲料水などの備蓄なども、そのまま代用品として利用することが出来ますので、必ずしも水だけでこの量をそろえる必要はなく、トータルで備蓄の量を定めると良いでしょう。
食事用
食事用としては、材料としての水と、煮炊きをする水に大別されます。材料としての水としては、ご飯を炊いたり、麺類をゆでたり、またインスタント食品に利用をするなどが考えられます。また味噌汁、カレーなどの汁物にも多くの水が必要となります。
煮炊きをする水としては、食材をゆでたり、またレトルト食品を暖めるのにも使います。ただし、基本的には煮汁がそのまま完成品となることが多いので、「食べない水」が求められるケースは、加熱用に限られてきます。
また「仮想水」という考え方も可能です。例えばレトルトカレーやおかゆのパックなどがあれば、それらを作るための水が節約できますので、擬似的に多くの水を備蓄していることと同じになります。
衛生・風呂用
手や顔を洗ったり、歯を磨いたり、風呂やシャワーを使うために利用する水です。衛生維持は飲料水や食事用の水と異なり、なくても「死なない」ため、優先度はやや下がります。特に風呂用の水を備えることが難しくあります。
特に風呂用としては100リットル以上の水が必要となるため、事前に備蓄を行える量ではありません。水のいらないシャンプーや歯ブラシを用意することで、擬似的に衛生・風呂用の水を備蓄する必要があります。
トイレ用
水洗トイレを利用するためにも、大量の水が必要となります。トイレの種類、時期によって必要な水の量が異なってきますが、おおよそ1回あたり10リットルの水が必要となります。これは「1人辺り3リットルを3日分」の全量に相当する、とんでもない量です。
風呂の水をためておいてトイレに流す、ということもよく提案されますが、場合によっては難しいことがあります。まず量として風呂の水は200リットルほど、トイレ20回分です。4人家族であれば1日で使い切ってしまう分量に過ぎません。
小便には水は流さず、大便のみ水で流す、という方法をとらざるを得ませんが、万が一下水までの配管が破断している場合、流した水と汚物が流れ出すことになるため、水洗トイレは使用しない方が良いこともあります。
そこで、個人の場合には携帯用のトイレを備蓄しておくことで、水の代替とします。場合によっては紙おむつ、生理用品、紙類とビニールの組み合わせ、などで補う必要もありますが、精神衛生的によろしくありませんので、やはり正規の携帯トイレを用意しておいた方がよいでしょう。