コレラが街にやってくる
本当はコワーイ地球温暖化
地球温暖化の影響で、微生物やバクテリアが引き起こすまさかの悲劇を、くわしく解説!
本の価格やレビューを確認する
概要・あらすじ
本書は、地球温暖化が引き起こすさまざまな自然現象が、微生物やバクテリアの活動を活発にし、結果人類を脅かす結果となるという主張を、科学的な根拠や具体的な事例を交えながら紹介している書籍です。
1999年に、蚊が媒介するウイルスが原因で、米国ニューヨークで流行した感染症の紹介を皮切りに、地球温暖化による気温上昇とともに、蚊の生息域が北上することで、流行の拡大が懸念されるマラリアや、同じく気温の上昇が原因で、一度は撲滅をしたはずのコレラ復活の示唆。また氷山の融解や、オゾン層破壊による紫外線の増加、二酸化炭素濃度の上昇などでも、多くの微生物・ウイルスが目覚め、人間を襲うだろうという指摘がなされております。
あまり馴染みのない事例が多く、また科学的な考察も積極的に盛り込まれているが、冒頭をに「20XX年、東京がコレラで壊滅する日」というシミュレーション小説を持ってきたり、内容をできるだけ分かりやすく書くなど、専門的な知識がなくても読みやすい文章に仕上がっております。
感想・思ったこと
地球温暖化と、微生物・バクテリア・感染症が、これほど密接に結びついているということは本書を読んで初めて知りました。とかく、気象災害や食糧危機などがクローズアップされ宇地球温暖化問題ですが、これが及ぼす影響は想像以上に広い範囲に及ぶようです。
水害で感染症が地域的に蔓延をしたり、海外旅行でマラリアに感染したり、また新型インフルエンザのパンデミックなども懸念をされておりますが、地球温暖化による気温上昇により、水道水がコレラの原因になったり、絶滅したはずのウイルスが氷山の中から目覚めたり、という事例が実際に起こりうるのだとしたら、防災を考える際にも大きな影響を与えそうです。
一般的には想像もしていなかった事例が多いのですが、その予想はリアルであり、また余りにも身近に破局がひそんでいるようです。本書を読んで、個人レベルで何かしらの対策が打てるようなものではありませんが、こういった可能性がある、という知識を得ておくことは必要だと思います。一読をおすすめする一冊です。
本の価格やレビューを確認する
書籍の情報
著書名…コレラが街にやってくる
本当はコワーイ地球温暖化
著者…藤田 紘一郎
出版社…朝日新聞社
初版発行日…2002/7/5
紹介文…「BOOK」データベース
「ごく近い未来に新しい病原体が日本列島に出現し、日本人はこの新しい病原体の犠牲となって、絶滅の危機を迎える」。これは決して脅しではない。温暖化とともに活動を準備している新しい病原体が私たちを取りまく環境中にわんさといることが最近明らかにされたからだ。日本の川や海の底には、生きていて代謝機能を維持しているが、培養できない状態の菌すなわち「潜生菌」がいっぱいいる。これらのなかにはよく知られた病原性大腸菌O157やコレラ菌などの他に、全く新しい菌がたくさんいる…。温暖化が引き起こす「今、そこにある危機」を告発。
目次
- プロローグ 20XX年、東京がコレラで壊滅する日
- 第一部 世界各地で起こっている不気味な現象
- 第一章 ニューヨークに殺人ウィルス発生
- 蚊のひと刺しにニューヨークが震えた
- 三つの疑問
- 地球温暖化によって北上する蚊
- 蚊の生態
- 東京も蚊が増えてきた
- 東京でもニューヨークと同じ事が起こるのか
- 日本脳炎・デング熱は日本で再流行するか
- 第二章 東京・大阪もマラリアの汚染地域へ
- 東京や大阪は正月に桜が咲く
- 世界で最大の感染症マラリア
- マラリアの起源と蚊の起源
- 環境温度とマラリア感染との関連
- 日本は再びマラリア流行地危機になるか
- 地球規模の監視網づくりが急務
- 第三章 人喰いバクテリアが日本列島を襲う
- 史上最強で最も凶悪な細菌感染症
- 魚や貝から見つかった「犯人」
- 「人喰いバクテリア」という最近
- 地球温暖化で感染者が南から北へ拡大
- 第四章 日本の冬を乗り切る昆虫やダニたち
- オーストラリアからセアカゴケグモ侵入
- 亜熱帯のチョウ、埼玉でヒラヒラ
- 小児ぜんそくの「主犯」チリダニの増加
- 地球温暖化によって出現した新型ツツガムシ病
- マダニ媒介による新しい病気・ライム病
- じわり増加している疥癬
- 第五章 しのびよるコレラ大流行の日
- 地球温暖化による微生物の変異
- 温暖化が誘導したペルーのコレラ大流行
- 日本国内で続くO157の流行
- 食中毒の増加と温暖化
- 海外渡航歴のない日本人のコレラ発症
- 「休眠状態」のコレラ菌が目覚めた
- 川の中で眠るO157が日本人を襲う
- 第二部 ほんとうは恐ろしい地球温暖化
- 第六章 海の生態系に異変
- 三メートル以上も深かった縄文時代の海
- 海のベルトコンベアー、温暖化で止まる
- サンゴ礁、温暖化を救う
- 潮流に乗った暖氷塊がサンゴの白化を招く
- 食物連鎖の「くさり」を切る温暖化
- イワシの現象
- カタクチイワシによるアニサキス症増加
- 大複殖門条虫症と地球温暖化
- 日本海裂頭条虫は絶滅する
- 第七章 殺人ウィルス氷山から復活する
- 氷が語る地球環境
- シベリアで発掘されたマンモス
- 極北の氷河から感染性ウィルス発見
- 過酷な環境を生き抜く深海の生物たち
- 地下生物圏・大量の微生物がひそむ世界
- キリマンジャロの雪消えて、アマゾンは砂漠に
- 森林から逃げ出した恐ろしいウィルスたち
- 第八章 紫外線が人間を弱くする
- 地球環境・八つの課題
- オゾン層、北極域でも急減
- 油断は禁物・太陽紫外線
- DNAを傷つける紫外線
- オゾン層の減少著しいところでの皮膚がん
- 紫外線が微生物の突然変異を招く
- 第九章 二酸化炭素の増加が新種の病原体をつくる
- 二酸化炭素はどのように増えてきたか
- 二酸化炭素の増大で人類は滅亡するか
- 絶滅の危機とともに誕生した生物たち
- 生命は大気と連動している
- 人類を脅かす新種生物の誕生
- バイオマス利用のエナジーエコトピア
- 第三部 地球温暖化によって起こる最悪のシナリオ
- 終章 生物多様性の危機と新種微生物の出現
- リベット仮設とは何か
- 地球温暖化にともなう新しい微生物の出現
- スムーズな移動ができない生物たち
- アザラシやイルカの大量死が意味すること
- 新型インフルエンザウィルスに倒れる日
- 人類が地球温暖化を導いた歴史的背景
- 生物多様性の危機