新型インフルエンザ世界がふるえる日
新型インフルエンザを知るために必要な知識を密度濃く凝縮。じっくり読み込める一冊!
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概要・あらすじ
新型インフルエンザウイルスの科学的特性、過去の歴史における新型インフルエンザの紹介、新型インフルエンザの現状と、パンデミック時に社会に与える影響、そしてパンデミック発生をシミュレーションした短編小説など、新型インフルエンザを知るために必要な内容がぎっしりと詰め込まれた、オールマイティーな書籍です。
他の関連書籍や資料からの引用も多く、この書籍を読めば新型インフルエンザに関する基礎的な情報は一通り得ることが可能です。ただし、そのためか内容はかなり濃くなっており、難しい表現も多くなっています。
しかし、難しい表現はあるものの、事実のみが客観的に書かれており、余計な感情を抱かずに読めますので、新型インフルエンザの知識を端的に得るための書籍として、適した一冊といえます。
感想・思ったこと
非常に内容が濃い1冊です。前述の通り関連書籍や資料からの引用が多く、いいとこ取りという印象も否めませんが、よく言えば扱い範囲が広く、引用に対する内容も掘り下げているため、入門書として広い方にオススメできます。
本書のエピローグに、パンデミックが発生した直後、フェーズ4が発令されるかどうか、という時期を描いたシミュレーション小説が載っておりますが、これ自体はおもしろく、パンデミック前夜の情景が細かく描かれており、おまけの域を超えた仕上がりになっています。
岩波新書で価格も抑えられ、またページ数もそれなりですので、ある特定の方々に強くお勧めするというよりは、新型インフルエンザに少しでも興味関心を持つ万人へおすすめをしたい1冊といえます。
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書籍の情報
著書名…新型インフルエンザ世界がふるえる日
著者…山本 太郎
出版社…岩波書店
初版発行日…2006/9/20
紹介文…「BOOK」データベース
アジアを中心に流行している鳥インフルエンザ。病原性の強いこのウイルスが人間への感染力を獲得するのは、もはや時間の問題かもしれない。グローバル化が進行する現在の世界において、地球規模の感染症対策を考える際に忘れてはならないことは何か。第一線で対策に奔走する著者が多角的な視点から提言する。
目次
- プロローグ―渡り鳥の死
- 第1章 いま私たちの住む世界 ~「適切な危機感」を共有するために~
- ・緊急事態発生
- ・過去からの「贈り物」?
- ・渡り鳥コネクション
- ・鳥インフルエンザウイルスがヒトに適応したとき
- ・世界的流行は周期的に出現する
- ・世界的流行は新型ウイルスが引き起こす
- ・シフトとドリフト
- ・インフルエンザ流行を規定する物
- ・新型インフルエンザの流行は自然に終息する
- ・いま私たちが置かれている状況
- 第2章 歴史のなかのインフルエンザ ~経験・記憶・対策~
- ・歴史に現れたインフルエンザ
- ・スペイン風邪-史上最悪のインフルエンザ
- ・悲劇の幕が開いた
- ・アフリカ大陸へ上陸
- ・アフリカでの流行拡大
- ・インド-最も大きな被害を受けた国
- ・そのとき日本では
- ・アジア風邪-1957~58年
- ・香港風邪-1968~69年
- ・1976年、アメリカからの教訓
- ・過去のインフルエンザ流行から学ぶこと
- 第3章 ウイルスとの共生を考える医学へ ~生態系のなかで~
- ・インフルエンザウイルスとは
- ・新型インフルエンザウイルスが出現する仕組み
- ・インフルエンザウイルスの感染・複製
- ・強毒型と弱毒型
- ・感染経路と潜伏期間
- ・熱帯地域での流行
- ・インフルエンザウイルス発見小史
- ・ウイルスと人の適応
- ・HIV-1とHTLV-1が語ること
- ・ウイルスの適応段階
- ・ウイルス感染症と人々の行動や暮らし
- ・共生-私たちの前に隠された鍵
- ・医療生態学の観点から
- 第4章 新型インフルエンザにどう対応するか ~国境を越えて~
- ・アジア経済に与える影響
- ・インフルエンザ対策計画
- ・新型インフルエンザ出現以前の対策
- ・国際保健規則-半世紀ぶりの改正
- ・新型インフルエンザウイルス出現期に必要なこと
- ・パンデミック期の対策
- ・ポストパンデミック期の対策
- ・新型インフルエンザに国境はない
- エピローグ―もうひとつの世界~