間違いだらけの地震対策
地震対策の目的は「死なない」こと。優先順位は備蓄ではなく、「死なない」環境作り!
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概要・あらすじ
地震に備えた防災で最も大切なのは、普段から水や食料をきちんと用意し、家族で地震発生時に避難する場所をきちんと相談しておくこと、といった防災内容。また、阪神大震災では、自衛隊の出動が遅れたり、断水で消火用水が手に入らなかった為に死者が6,000名を超える大惨事になった、という過去の分析。
これらがすべて間違いであることを、科学的な根拠を示しながら、同時に心理的な側面を考慮しつつ、大胆に切り込んでいるのが本書です。多くの客観的データを元に、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震を細かく検証し、正しい地震対策と間違った地震対策の違いや、地震対策を行う際の優先順位などをアドバイスしています。これまでの地震対策マニュアルの内容を基本的には肯定しつつも、それ以上に大切な対策が多くあることを真っ向から訴えている貴重で重要で、効果的な1冊です。
感想・思ったこと
防災に関する勉強を始める前の私自身、地震対策といえば第一に水や食料をきちんと備えること、という認識がありましたが、作者の目黒氏によれば、『防災で最優先に考えなくてはならないのはまず「死なない」こと。その先のことは、「死なないための防災対策」がきちんとなされてから考えなくてはならない』と語っています。
さらに氏は、『大震災発生後に被災地の声を拾うと、「飲料水が足りない」「トイレが足りない」「行政の対応が遅い」という多くの声が聞こえ、震災後の新たな防災対策もこれらの声を拾い上げ、反省を活かしていくことからスタートすることが多いですが、これらの声はすべて「死ななかった」人の声であり、本当に聞かなくてはならないのは「死んでしまった」人の声です』と続けている。まったくもって同感を感じました。
これまでの地震防災に対して持っていた意識を部分的に覆させられ、しかし今後よりよい防災意識を持って事前対策に望めそうな考えを付与してくれた本書。水や食糧の備蓄を始める前、すべての地震対策に先取ってまず読んでおきたい1冊といえます。強くおすすめします、ぜひ一読頂きたい一冊です。
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書籍の情報
著書名…間違いだらけの地震対策
著者…目黒 公郎
出版社…旬報社
初版発行日…2007/10/15
紹介文…出版元紹介文
「緊急地震速報」スタート!その時、あなたはどうしますか?あなたとあなたの家族をまもるために、国内外の地震被害から学ぶ地震対策とは――。
目次
- 第1章 地震の本当の怖さを知っていますか
 - ~最近の地震被害から学ぶ強い家の大切さ~
 - 自衛隊がもっと早く来れば犠牲者は少なくてすんだのか?
 - 発見が早ければ命を失わずにすんだのか?
 - 火災が起こらなければ犠牲者は減ったのか?
 - 消火栓から十分な水が出れば火災を防げたのか?
 - 地震防災の最大の課題は火災なのか?
 - 兵庫県南部地震で火災が拡大したのはなぜか?
 - 元気な若者が多く亡くなったのはなぜか?
 - 新潟県中越地震の被害が少なかったのは都市部ではなかったからか?
 - 耐震設計のマンションに住んでいれば安全なのか?
 - 兵庫県南部地震の教訓とは何か?
 - 誤った認識が多すぎる
 - 地震対策で最優先すべきことは何か?
 - 【基礎知識1】マグニチュードと震度はどう違う?
 - 【基礎知識2】気象庁震度階級関連解説表
 - 【コラム】兵庫県南部地震は予測されていた
 - 第2章 大地震は明日起きても不思議ではない
 - ~マグニチュード八クラスが四、五回、七クラスがその一〇倍起こる~
 - 地震は本当に起こるのか?
 - なぜ「地震三兄弟」が危険なのか?
 - 一度地震起こればその後は安心か?
 - 地震被害の規模はどうなるのか?
 - 津波の被害を防ぐためにも
 - 【コラム】炊き出し訓練は災害イメージを持って
 - 【基礎知識3】地震発生のメカニズムと地震の種類
 - 【コラム】訓練は具体的に
 - 第3章 地震に襲われたとき、あなたはどうしますか
 - ~災害イマジネーション能力を身につける~
 - なぜ、災害イマジネーションが必要なのか?
 - どうすればイマジネーション能力をつけられるのか?
 - あなたはイメージできますか?
 - 「健常者=潜在的災害弱者」の認識をもっていますか?
 - 自分の死後の物語を考える
 - いつも同じ対応でだいじょうぶですか?
 - 徹底した当事者意識をもつ
 - 「守られる側」と「守る側」
 - 行政情報をオープンにする
 - 「グラッときたら」どうするか?
 - 緊急地震速報を知っていますか?
 - 緊急地震速報を活かすには?
 - 【コラム】目黒巻きを活用しよう
 - 【基礎知識4】被害想定と地域危険度
 - 【基礎知識5】緊急地震速報のしくみ
 - 【コラム】進むリアルタイム地震防災対策
 - 第4章 あなたの家はだいじょうぶですか
 - ~今すぐ耐震補強を進めよう~
 - どうして耐震補強が進まないのか?
 - 耐震強度偽装問題が社会的な注目を集めましたが
 - あなたの街はだいじょうぶ?
 - あなたの家はだいじょうぶ?
 - あなたの部屋はだいじょうぶ?
 - 耐震補強は経済的にも得なのか?
 - 新しい公助制度のしくみ
 - 新しい共助制度の仕組み
 - 新しい自助制度の仕組み
 - 今、流れを変えておかないと
 - 少子高齢化・人口減少社会を前提とした災害に強い街づくり
 - 【基礎知識6】転倒防止器具の効果
 - 第5章 災害を減らすことはできるのか
 - ~災害のメカニズムを知ろう~
 - 災害とは?
 - ハザードは阻止できないが…
 - 災害の影響の最小化と、よりよい環境の実現のために
 - 災害を理解するための三つの要素とは?
 - 災害が進化するという意味は?
 - 【コラム】長期化する震災の影響 -飛散したアスベストの問題-
 - 第6章 災害が起こってもあわてない
 - ~危機管理(防災)マニュアルを作ろう~
 - 大地震でなくてもライフライン被害は発生する
 - ライフライン復旧に大きな時間差が出るのはなぜか?
 - ライフラインは生命線か?
 - 災害時にどう行動するか?
 - 防災マニュアルのあるべき姿
 - 次世代型危機管理・防災マニュアル
 - 危機管理・防災マニュアルの作り方
 - 【コラム】災害時の最適な人材運用法
 - 【基礎知識7】地震が起きるまでにやっておくべきこと
 - 【基礎知識8】災害時に効率よく連絡を取り合うために