企業の防災備蓄用品、管理と入れ替え方法
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執筆者:高荷智也
防災備蓄を行う際は、備蓄専用品ばかりをそろえると調達や管理のコストがかさむため、自動販売機やオフィスグリコなど、日常で消費可能なものと併用することが有効です。
災害発生からの時間により、必要な防災用品が変わる
大地震発生時、必要な防災用品や備蓄品は時間の経過と共に変化するため、保管場所もこれを考慮しなくては意味がありません。例えば地震発生の直後には、身の安全を守るためのヘルメットや帽子が必要ですが、これが防災倉庫に積んであっては意味がなく、各自のデスク周りに用意されている必要があります。
揺れが収まった直後には救助や応急手当の道具が必要になりますが、これも各フロアの取り出しやすい場所、入口付近などで保管していなければ意味がありません。逆に水や食料といった備蓄品は、トイレの設営後に順次配布をする必要があるため、各自が自由に取り出せる場所ではなく備蓄倉庫などで集中管理されていることが望ましのです。
なおこの際、火災発生時のスプリンクラーなどから備蓄品を保護するため、個別包装されていない備蓄品については、いわゆるブルーシートなどを段ボールにかぶせて防水しておくことが望ましくあります。なおブルーシートはオフィス滞留時の敷物としても有効利用できます。
備蓄品の入れ替え、利用の練習をする
水や食料、医薬品や乾電池のように消費期限がある備蓄品は、一斉に入れ替え時期を迎えないように期間を調整しておくことが理想です。支出の発生を平準化する理由もありますが、入れ替え期間の前後に大地震などが生じた場合、物資不足で入れ替え品の調達ができなくなる可能性もあるためです。
また従業員の数や構成に変化が生じた場合に柔軟に対応するためにも、年1~2回の備蓄品確認と入れ替えスケジュールを組んで、最新の状況に合わせた見直しを行い続けるとよいでしょう。定期的に備蓄品に触れる機会を設けることで、防災担当者や他の従業員の意識継続を図ることもできます。
防災備蓄品の消費期限は、余裕を持って設定されています。例えば消費期限が切れた瞬間に食べ物が腐り出したり、ウェットティッシュが乾燥をはじめるわけではないのです。期限が数ヶ月程度切れたからといって、全物品を廃棄して入れ替える必要はなく、次回の入替タイミングで交換をすればよいのです。
また、消費期限がある備蓄品については、入れ替えのタイミングで従業員に配布して、会社がきちんと防災備蓄を行っているというメッセージによる安心感を与えたり、使用感を試してもらうことは有効といえます。特に非常食については個々人の嗜好やイメージに大きな差があるため、定期的にアンケートを取って入れ替え時の参考にすることもよいでしょう。
備蓄品の一部は、日常で流通するものと併用する
防災計画は重要ですが、それ自体に生産性がある活動ではなく、さらに究極的には永久に役立たないことが最良の存在でもあるため、会社としてもまた現場の防災担当者にしても、いかにモチベーションを維持し続けるかは重要な課題といえます。
従業員の生命に関わる什器の固定などについては、最初にある程度のコストを用いてでもきちんと環境を整備するべきですが、長期滞留用の防災備蓄など、従業員が死傷しなかった後に必要となる準備については、特別な費用や手間を用いることなく、いかに準備を継続し続けるかが課題となります。そこで、オフィス環境や日々の業務オペレーションそれ自体を災害時に強い作りとすることを考えます。
具体的には、社内に従業員用の自動販売機やウォーターサーバー、菓子類の販売コーナーを導入したり、自由に使える救急箱を常備するようにします。オフィスグリコ、オフィスコンビニ、富山の置き薬など、常に補充されるようなサービスを利用すれば、一定量の備蓄を期間を意識せずにストックできるようになり有効です。
来客や従業員用に水やお茶のペットボトルなどを用いているのであれば、賞味期限が許す範囲で最大限の在庫をオフィス内に用意するとよいでしょう。来客と社内需要で、月に1,000本のペットボトルが消費される場合、社内に12,000本のペットボトルを備蓄しておいて、消費した分だけ新しく補充するという方法を取れば、入れ替え期間1年で、常に新しい飲料水の備蓄ができるようになります。
防災備蓄を全て災害時専用として用意するのではなく、一定量の防災備蓄や緊急用品については、備蓄量の一部を日常で流通させられるもので補うことで、コストダウンと入れ替えの手間軽減を図ることが可能です。