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ゾンビ発生時に想定される被害状況と対処方法

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最終更新日:

執筆者:高荷智也

ゾンビが発生した際にはゾンビ自体の脅威以上に、致死率100%と言われるゾンビウィルスの感染やインフラの停止が問題になります。ゾンビウィルスによるパンデミックとはどのようなものなのか、ゾンビ発生により考えられる被害の種類や特性を個別に解説します。

 ゾンビに襲われること自体は問題ではない

  「ゾンビ災害」による被害として最初に想像するのは、やはり「ゾンビに襲われて大変なことになる」といった状況が多いでしょう。ゾンビ映画や漫画などを見てもこうしたゾンビ襲撃シーンは一番の見せ場として描かれており、もちろん重大な危機であると言えます。しかし、ゾンビ災害をより本質的に考えるとより深刻な問題が潜んでいるのです。

 ゾンビの攻撃を受けるというのは、例えば森の中でクマやイノシシ、海の中でサメに襲われる被害と類似しています。ゾンビの能力にもよりますが、単に「凶暴な生物による近接攻撃」だけが問題なのであれば、武器を準備したり戦い方に工夫を施すなど様々な対処が考えられます。

 ではなぜゾンビ災害が問題になるのか?それは、ゾンビウィルスという存在が原因です。

 “ゾンビウィルス”によるパンデミック(感染の世界的大流行)

 ゾンビ災害で問題となるのは、人体をゾンビ化させる原因と考えられている”ゾンビウィルス”が、強力な感染力と高い致死性を持っていることです。ゾンビウィルスの種類にも諸説ありますが、共通していることは「感染力100%」「致死率100%」「感染から発症まで数秒~数分」という、感染したらまず助からないという恐ろしい特徴です。

 しかし感染の伝播力については、基本的に「体液による濃厚接触」のみであることが多く、ウイルスのキャリア(保菌者)であるゾンビとの直接接触を避けることで感染から免れることができます。(※ウィルスの種類によっては飛沫感染・空気感染などを生じさせる感染力の高いものもあるため、ゾンビ対策においては感染力の見極めも重要な項目です。)

 この、「高い感染力・高い致死率・感染すると凶暴化・しかし接触感染のみ」というウィルスの特徴は、「狂犬病ウィルス」による症状に似通っており、狂犬病ウィルスが変異をおこして「人-人」感染をおこすようになった場合、ゾンビウィルスによるパンデミックと同じようなことが生じるのではないか、とも考えられています。

ゾンビパンデミックによる社会・インフラの崩壊

 ゾンビウィルスが人と人との感染接触になる以上、基本的な対策としては人と会わないこと、人が多くいる場所から離れることが重要になります。そのためゾンビウィルスの感染がはじまりその事実が広まり始めると、人々は職場を放棄して自宅に籠城したり、都市部を避けて郊外へ避難をしたりという行動を取り始めます。

 これは、毒性の高い新型インフルエンザがパンデミックとなった場合に、社会機能の維持が難しくなるという想定に似通っていますが、電気・ガス・水道といったインフラをはじめ、輸出入の停止や国内流通網のマヒにより生活必需品の入手ができなくなり、ゾンビウィルスに感染しなくとも深刻な飢餓状態に襲われる可能性が生じます。

 そのためゾンビ対策としては、感染を避けるための対処に加えてインフラや社会機能が低下あるいはマヒをすることに備えた、食料や生活用品の長期備蓄が必須となります。具体的には次のような状況に陥る可能性があるため、その準備が必要になります。

ライフライン(電気・ガス・水道・ゴミ処理)の停止

 ゾンビの発生がどこで生じるのかにもよりますが、ゾンビウィルスの感染が国内に広がり、その規模が拡大するにつれてあらゆる職場・産業から人がいなくなります。これはゾンビウィルスに感染してゾンビ化してしまうということもあれば、避難をするために職場を放棄するためということもあり得ます。

 強毒性の新型インフルエンザパンデミック時には、これらライフライン関連業の従事者に対して優先的にパンデミックワクチンを投与することで、できるだけインフラを維持する計画と準備が進められていますが、ゾンビハザードの場合は有効なワクチンが存在しないため、早晩電気・ガス・水道・ゴミ処理といったライフラインは停止をすることになります。

 また日本の場合、海外からの輸入、とりわけ石油や天然ガスなどのエネルギーが入ってこなくなると発電所が動かせなくなり(※特に記事執筆時においては原発が軒並み停止しているためなおさらです)、電気が止まればその他全てのインフラが動かなくなるという問題がありますので、インフラ従事者だけを守ってもライフラインは維持できないのです。

通信網(テレビ・ラジオ・電話・インターネット)の停止

 ライフライン、とくに電気の停止に伴い通信網も順次使えなくなっていきます。また通信や放送局が生きていたとしても、ゾンビ発生の初期段階において「死体がよみがえり人を襲っています」という報道ができるはずもなく、テレビやラジオの報道はほとんどあてにできないことが想定されます。

 スマホが普及した昨今においては、テレビやラジオの報道よりも一般人による「SNSを用いた拡散」の方が災害時の第一報としては早く入手できる可能性があるため、インターネットを用いた情報収集が重要になりますが、インターネット網も停電が進めば順次機能を停止していくことになります。

流通網の停止(小売店での商品入手ができなくなる)

 流通網の発達に伴い家庭における食料備蓄は少なくなり、かわりにコンビニやスーパーを冷蔵庫代わりとする世帯が増えていますが、ゾンビ発生時には流通網がマヒするため、お店で商品を入手することができなくなり、しかもその期間は長期化する可能性が高いため、とくに食料品が手に入らなくなるという大きな問題が生じます。

公共交通機関(鉄道・バス・航空機・船舶)・自家用車の停止

 ゾンビウィルスの感染を避けるためには、ウイルスのキャリア(保菌者)であるゾンビを避ける必要があり、そのためには都市部から郊外へ、郊外からさらに人気の少ない場所へと避難をしていく必要がありますが、そのための移動手段も全て立たれてしまうという問題が生じます。

 鉄道・バス・航空機・船舶については、ライフラインの停止と同じく各職場から人がいなくなっていくことと、最終的に停電を起こすことから運行が止まります。また自家用車を使おうとしてもガソリンの入手が難しくなることと、ゾンビ発生の直後から大量の避難者が道路を埋め尽くし、交通事故が多発すると考えられていることから道路が通行不能になることが想定されます。

医療機関の崩壊

 ゾンビ発生の直後から医療機関には人が殺到します。ゾンビに襲われて大けがを負った怪我人、ゾンビに噛まれた家族をなんとかしてもらおうと駆けつけた人々、ゾンビウィルスを求めて病院にやってくる人々など、多くの人が医療機関に押し寄せますが、順次ゾンビ化していってあっという間に機能停止に陥るでしょう。

 もとよりゾンビウィルスに対して有効なワクチン・治療法が存在しないのですから、そもそも医療機関へ行くこと自体が無意味なのですが、医療機関の機能が停止することによって、ゾンビ以外を原因としたケガや病気の治療も受けられなくなりますし、また入院中の患者や、人工透析で通院をする患者などにとっても深刻な問題となります。

経済活動の崩壊・ハイパーインフレの発生

 ゾンビウィルスパンデミックにより社会が崩壊していくことにあわせて経済パニック生じ、株価の暴落・預金封鎖・ハイパーインフレの発生など、経済活動自体も崩壊していくことになります。こうした状況になった場合、金融資産の大小は生き残りに関係なくなるため、籠城に対する備蓄品の準備や、ゾンビに対する物理的対処の備えが重要になります。

 強毒性の新型インフルエンザパンデミックなどの場合は、ワクチンが完成すれば事態を沈静化させられることが分かっているため、社会機能や経済活動の停滞は一時的なものになると考えられています。しかしゾンビハザードの場合、感染の初期段階で封じ込めに成功すればよいですが、パンデミック状態となり世界的に流行が感染すると手がつけられなくなり、市場経済そのものが崩壊してしまう恐れがあります。

警察・消防の活動停止と治安の悪化

 さらに社会機能の低下に伴い、行政サービス、警察や自衛隊などの治安維持活動、消防や救急などの活動も停止をしていくことになり、これが新たな二次災害を生じさせる原因になっていきます。消防活動が停止をすることで火災の消火ができなくなりますので、ゾンビから逃げる自動車が事故を起こしたり、ゾンビとの直接戦闘で火を用いたことで火災が生じる可能性があります。

 ゾンビに備えて自宅で籠城をしていたとしても、火災が迫っている場合は避難をしなくてはならず、またこの火災自体に巻き込まれる可能性もあるため、ゾンビ以外の脅威として避難の準備が必要になります。また治安維持活動が停滞し、一方物資の入手が難しくなっていくと、暴徒が生じたり大規模な暴動が発生する可能性があるため、ゾンビに対する対処とあわせて人間の暴力に対する準備も必要になっていきます。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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