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食料品の日常備蓄(ローリングストック)のポイント

最終更新日:

執筆者:高荷智也

食料品を日常備蓄する目的

流通のマヒを伴う自然災害が生じると、食べ物の入手が難しくなることがあります。具体的には以下のような事態への準備として、食品の日常備蓄(ローリングストック)を行います。

  • 道路や店舗が物理的に破壊される災害…大地震・津波・台風・噴火・大雪などで、物理的に買い物ができなくなる状態への備え
  • 停電や断水で調理ができなくなる災害…前述の各種災害で、ライフラインに被害が生じ、調理家電やコンロなどが使えなくなる状態への備え
  • 「買い占め」という二次災害…超大型台風の接近、南海トラフ巨大地震の「半割れ」、大規模な噴火の予告、感染症によるパンデミックなど、実際に物理的な被害が生じていない場合でも、「不安・デマ・噂」などで買い占めが発生し、食料品の入手ができなくなる状態への備え

飲料水の備えは、断水が生じる災害が発生しなければ不要なため、新型インフルエンザや新型コロナウイルスによる感染症パンデミックでは優先順位が低くなります。しかし食料品の入手は、交通網のマヒや、買い占めという災害によっても引き起こされるため、備蓄品の中でも優先度が高めになります。

日常備蓄する食料品の量と期間の目安

避難時に持ち出す必要がある、非常持ち出し袋などへ入れる食料品は、日常備蓄(ローリングストック)ではなく、純粋な「非常食」として、リュックサックなどへ入れておきます。日常備蓄で準備をするのは、命を守った後に必要となる、ライフライン停止時の生活。または数週間~数ヶ月間にわたり食料品の購入が難しくなる事態に対応する分量になります。

3~7日分程度の日常備蓄を行う

主に大地震や大規模な浸水害など、「先が見える」大規模な自然災害に対する備えとして、3日から1週間分程度の食料品を備蓄します。

  • 3日分…大地震や浸水害などが発生した際、発災から3日(72時間)は、消防や自衛隊をはじめとする「公助」の力は、人命救助が最優先されます。無事生きのびた人々への支援が本格的にはじめるのは4日目以降となりますので、最初の3日間は「自助」により自活する必要があります。
  • 7日分…一方、首都直下地震や荒川の決壊を伴う大規模水害、また南海トラフ巨大地震などの「超大規模な自然災害」が発生した場合は、生きのびた方々への控除が本格化するまでに1週間程度必要な想定もあります。そのため、大都市など「同時に被災する人が多い」場所に住んでいる場合は、7日分程度の食糧備蓄が必要になるのです。

数週間~数ヶ月分程度の日常備蓄を行う

新型インフルエンザや新型コロナウイルスによる感染症パンデミックや、大規模な火山の噴火による長期的な降灰などが生じた場合は、数週間から数ヶ月程度、食料品の入手が困難になる恐れがあります。

この規模の災害に備える場合は、備蓄する食料品の量もかなり多くなりますので、ある程度計画性を持って日常備蓄に取り組む必要があります。

ただし、この規模の災害について、「どのくらいの被害に備えて、どのくらいの量の備蓄品があればよいのか」を想定することは極めて困難です。そのため、「必要な量」を求めるのではなく、「負担なく備蓄できる最大量」を備蓄するアプローチをすることをおすすめします。

主食類の日常備蓄について

お米(無洗米・白米・玄米)

まずはお米や玄米の日常備蓄です。ご飯を炊くことができれば大抵はなんとかなります。突発的な買い占めパニックが生じた場合でも、米袋を数個確保できればすさまじい安心感が得られるでしょう。お米は純粋な食糧としての価値だけでなく、米民族日本人に心の安定をもたらす存在価値を持っているのです。

さて、というわけで、できればお米はなくなってから買うのではなく、最低でも1~2ヶ月分程度のストックを日常備蓄で確保しておきたいところです。スペースや環境が許すのであれば、大凶作で1年間まともな流通がなくなったとしても耐えられるように、半年~1年分を確保することが望ましい対象です。

…が、お米は生鮮食品であり、実は長期保存が難しい食品であることが問題となります。

お米の賞味期限は、秋~冬の涼しい季節で2ヶ月程度、春~夏の暑い季節では2~4週間程度となります。腐って食べられなくなる訳ではありませんが、呼吸や酸化による味の劣化、虫やカビの発生、感想や臭い移りによる食味の低下などが問題となります。

お米を保存する環境として最適なのは、冷蔵庫の野菜室です。直射日光がなく、低温で、虫も侵入できないベストな場所なのです。しかし、大量のお米で野菜室を占拠することはできませんので、冷蔵庫に入れるお米は、「食べる直前の数キロ」程度に限られます。

そのため、数ヶ月分以上のお米を、家庭内で、常温備蓄したい場合は、別の方法をとる必要があります。最もおすすめの方法は「無酸素保存」です。この方法を使えば、夏場に35度を超える劣悪な環境であっても、家庭内でお米を劣化させずに保存することができるようになります。詳しくはこちらをどうぞ。『無酸素保存によるお米の長期備蓄方法』

パックのご飯やレトルトのおかゆ

お米とあわせて多少準備しておきたいのが、パックごはんやレトルトのおかゆです。大地震や浸水害などでライフラインが利用できなくなった場合、カセットコンロなどでお湯を沸かせば、パックご飯やレトルトのおかゆを食べることができます。

レトルトのおかゆは、感染症パンデミックなどで自宅療養を行う際の食事として、あるいは幼児・高齢者・要介護者がいて、ご飯ではなくおかゆを使いたい場合などに役立ちます。味も白米だけでなく、鮭味、梅味などありますので、好きなものを探しておくとよいでしょう。

うどん・そば・素麺などの乾麺

ごはんがなければ麺を食べたらいいじゃないという名言があります(ありません)。うどん・そば・そうめんなどの乾麺は、賞味期限1.5年~3年程度と、お米と比べてかなり長いため、長期備蓄の主食として有効です。

普段の食事で使っているのであれば、賞味期限以内に最大限消費しきれる量が、最大備蓄量となります。うどん・そば・そうめんなどを全く食べない、という家庭も希と思いますので、生麺をつかう機会があるのであれば、その一部を乾麺に切り替えるということも有効です。

なお、これらの乾麺を備蓄する際には、「つゆ」の調達が必須となります。濃縮つゆや粉末ダシなどを一緒に日常備蓄しておくとよいでしょう。ご飯と違って素の乾麺を食べるのはかなり困難です。

スパゲティやマカロニなど乾麺のパスタ

主食類の中で最も備蓄しやすいのが乾麺のパスタです。ほとんど水分を含んでいないため賞味期限が長く、標準的なもので3年程度持ちます。月に1食くらいはパスタをゆでて食べるという場合は、賞味期限36ヶ月分を先に購入できますので、36食分の乾麺のパスタを、無駄にすることなく保存できます。

パスタを保存する際には、レトルトや缶詰のパスタソースを合わせて備蓄してもよいでしょう。これらの賞味期限も1.5年~3年程度と長いため、同じように「賞味期限以内に使い切れる量」を最大値に、備蓄する量を定めてください。

カップ麺や袋ラーメンなどのインスタント食品

手軽で美味しく、カセットコンロさえあれば主食保存の主力となるのがカップ麺をはじめとするインスタント食品です。私も学生~新卒時代は、スーパーカップ(アイスではない方)やペヤングの特盛りで命をつないでいました…。

しかし、カップ麺や袋ラーメンは油で揚げているため、賞味期限が半年程度と短いものが多いのです。あまり大量に買い込みすぎると消費しきれない恐れがありますので、賞味期限内に食べきれる量をきちんと見定めて、まとめ買いしておくことが重要です。

またインスタント食品は、基本的にお湯がなければ固いスナック菓子になります。カセットコンロとガスを必ずセットで準備するようにしてください。お湯さえ調達できれば、早い・簡単・うまい・特に冬場は神、と素晴らしい備蓄食糧になります。

アルファ米やパンの缶詰などの非常食などはどうなのか?

お湯や水を注ぐだけで手軽にご飯が食べられる「アルファ米」や、缶を空けるだけですぐに食べられる「パンの缶詰」などは、賞味期限も3~5年と長く、備蓄品として大変優れています。

…が、防災用のアルファ米やパンの缶詰は、性能がよい分お値段も高く、日常備蓄として大量に用意するのには向いていません。そのため、基本的には非常持ち出し袋などのリュックサックに入れる非常食として準備をするのに適しています。

もちろん、コストを度外視できる場合、宝くじや株で一発当てたという状況であれば、ぜひ日常備蓄のラインナップに追加することは問題ありません。主食類のなかで「パン」をそのまま備蓄することは難しいため、どうしてもパンを追加したい場合は、「パンの缶詰」が最適となります。

おかず・副食類の日常備蓄について

肉・魚・おかずなどの缶詰

備蓄食の定番といえば缶詰です。肉・魚・豆・野菜など、おかず類となる缶詰は、2~3年程度の賞味期限を持っています。仮に3年のものだけをそろえた場合、月に1つ食べて補充することを繰り返せば、常に手元に30個以上の缶詰を備蓄することができます。

非常時には「食べ慣れたもの」「好きな味のもの」を用意することが望ましいため、できれば事前に自分や家族が好きな缶詰を見つけておいて、それを日常的に消費するようにするとよいでしょう。食事では使わないという場合は、お酒のおつまみなどで消費しても構いません。

缶詰は火を使わずにそのまま食べられますので、日常備蓄として家庭内で消費する他、非常持ち出し袋などのリュックサックに入れて、避難時に持ち出すこともできます。

ただ、缶詰は比較的味が濃く臭いの強い食品が多いため、食べ終わった後の処理方法をセットで準備しておくことが重要です。といってもゴミ袋などで構いません。ゴミ回収が再開されるまで自宅に保管できるよう、小さなポリ袋などをまとめて備蓄しておくとよいでしょう。

果物やカットフルーツの缶詰

缶詰の中でも、果物の缶詰は、肉や魚の缶詰と比較して少し賞味期限が短めです。といっても2年程度の賞味期限はありますので、十分日常備蓄の対象として使うことができます。

しかし、果物の缶詰などは、ある程度意識して食べなければ、家庭によっては全く消費されないというケースもあります。甘く・水分が多いフルーツの缶詰は、非常時の食事としては大変優れています。

できれば定期的に消費する習慣にしてしまって、いくつかの果物の缶詰を日常備蓄できるようにするとよいでしょう。子どもがいる世帯であれば、ヨーグルト・サイダー・炭酸水などとあわせてフルーツポンチにしたり、フルーツゼリーにしてしまうと、あっという間に消費できます。

カレー・シチュー・丼もの、パスタソースなどのレトルト食品

パスタソース、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルト牛丼、レトルトスープなど、アルミパウチに入っているレトルト食品も、缶詰のように優れた日常備蓄の対象になります。

賞味期限は、おおむね1~2年程度のものが多いので、賞味期限内で食べきれる量の最大値を、普段から備蓄しておくとよいでしょう。

ご飯とセットで食べるものが多いため、お米の備蓄や、パックご飯の備蓄とあわせて検討してください。また基本的に温めて食べた方が美味しいため、レトルト食品にもカセットコンロは有効です。

カップみそ汁・カップ春雨・粉末スープなど

冬場の災害時には、温かい食事が健康維持とメンタルヘルスケアに大変有効です。ご飯やおかず類を加熱できればもちろんベストですが、お湯を沸かすことができれば、カップのお味噌汁や粉末スープを追加できて大変役立ちます。

スープ類は種類が豊富で、個人的な味の好みも分かれる食品ですので、自分が好きな味のものを事前に見つけておき、それを賞味期限内に食べられる量、備蓄するとよいでしょう。

その他の食品の日常備蓄について

ポテトチップス・スナック・チョコレート・クッキー・飴などの菓子類

果物の缶詰と同様に、菓子類の日常備蓄も、非常時のメンタルヘルスケアに有効です。子どもがいる場合、甘いものが好きな家族がいる場合など、食事に甘いものを追加するとストレスの軽減につながります。もちろん菓子類は総じて高カロリーなため、必要カロリーの一端を担わせる効果もあります。

日常備蓄の対象にするのは、なんでも構いません。賞味期限が数ヶ月以上あり、自分や家族が好きなお菓子であれば、賞味期限以内に食べられる量の範囲で、好きなだけ事前購入すればOKです。

お菓子の日常備蓄で注意が必要なのは、うっかり食べ過ぎてしまって、補充する前になくなってしまうことです…。食べてから買うのではなく、買ってきたものを保存して、古いモノを食べるという方法がよいでしょう。

野菜ジュースやビタミン剤

1週間程度であれば問題ありませんが、日常備蓄品がメインとなる生活が数週間~数ヶ月継続すると、肉・魚・野菜・果物などの生鮮食品の摂取が減り、ビタミン不足による健康問題が生じはじめます。

そのため、普段から消費しているのであれば、野菜ジュースやビタミン&ミネラルなどのサプリメントを日常備蓄に追加すると役立ちます。野菜ジュースは飲料水の代わりにもなりますので、水の日常備蓄の量を減らすこともできます。

普段全く消費する習慣がないという場合、月1本の野菜ジュースを飲むようにするなど、食生活に少し追加することを検討してもよいでしょう。ビタミン剤について消費する習慣がなければ、日常備蓄ではなく、通常の入れ替え備蓄対象にして、ある程度の量をまとめて購入・保管、数年後に廃棄して交換という方法でも構いません。

冷凍食品など

冷凍食品の日常備蓄も有効です。停電を伴う大地震や台風が生じた場合は解凍されてしまうため、初日~翌日の食事を冷凍食品中心にすることになります。

一方、感染症によるパンデミックや、大雪による「外出だけができなくなった」という状況では電気が使えるため、冷凍食品を活用することができます。冷凍庫の容量が無限ではないため、保存できる量には限りがありますが、常に冷凍庫を満タンにするような生活にするとよいでしょう。

粉末のプロテイン・プロテインバーなど

日常備蓄による長期備蓄品に追加したいものが、プロテインです。非常時の食事はどうしても炭水化物が中心になりやすく、タンパク質が不足します。しかし炭水化物は体を動かす燃料にはなりますが、体を作る材料にはなりません。

健康を維持する、とりわけ感染症パンデミック時に、体内免疫を良好に保つためには、タンパク質の摂取が不可欠です。肉や魚の缶詰もありますが、これだけではタンパク質の摂取量が不足しますので、ぜひプロテインを追加することをおすすめします。

普段からプロテインを愛飲している方であれば、賞味期限以内に使い切れる量を先に購入するだけでOKです。プロテインを飲む習慣がない場合は、プロテインバーなどを、菓子類の日常備蓄品として追加するのがおすすめです。

チョコバータイプやウエハースタイプであれば、ほとんど通常のお菓子と同じ感覚で食べることができますので、定期的に消費する習慣にしてしまうと、非常時には大変役立ちます。

食料品の日常備蓄(ローリングストック)のイメージ

週1食カップラーメンを食べる場合…

カップラーメンの賞味期限を半年間とします。週に1食のカップ麺を食べる場合、半年の消費量は約25個です。ということは、25個のカップ麺を購入して自宅に保管しておけば、毎週1個食べて1個補充することを繰り返すだけで、常に25個のカップ麺を手元にキープすることができます。

週に2回食べるのであれば100個のカップ麺を。週7食がカップ麺であれば175個までであれば、賞味期限以内に消費することができるため、無駄になりません。いつか食べる物を先に買うだけですので、防災備蓄の為の追加コストはゼロ円です。

月1回スパゲティをゆでて、好きなパスタソースを絡めて食べる場合…

スパゲティの乾麺の賞味期限は長く、3年程度あります。またアルミパウチに入ったレトルトのパスタソースの賞味期限は1~2年程度です。月に1食のパスタを食べる場合、1年間で消費するレトルトのパスタソースは12袋になります。ということは、12種類のパスタソースを購入して自宅に保管しておけば、月1個食べて1個補充することを繰り返すだけで、常に12袋のレトルトパスタソースを手元に保管できます。

家族4人で行うのであれば48袋のパスタソースを、賞味期限が2年のものだけを使うのであれば、さらに倍量を賞味期限以内に消費することができます。これらも、どうせいつか購入するものを先に準備しているだけですので、無駄にはなりません。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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